オオカミ少年は夜に吠える
キノハタ
第1話
ねえ、お姉ちゃん。
知ってる? 泣きたいときはね思いっきり吠えるんだよ。
狼みたいにさアオーンって。
辛い時も、苦しい時も同じだよ。
痛くてじくじくした時にこそさ、思いっきり吠えるんだ。
意味? ないよ。
なくちゃダメ?
いいんだよ、意味なんて。犬が吠えるのに理由が必要?
オオカミは意味のある時にしか吠えない? 細かいこというお姉ちゃんだなあ……。
そんなの、気にしなくていいのさ。
辛いことこそ、叫ぶんだ。
苦しいことこそ、謳うんだ。
考えるんだよ、もし、お姉ちゃんがさ子どもだったらどうするかなって。
言いたいことはバンって言っちゃうんだ。声にならないなら叫ぶんだ。
夜っていいよね、吠えてもなんにも変じゃない。
どこかで犬が吠えてるってしか思われないよ。大丈夫。
ほら、いくよ、せーの。
アオーーーーーーーーーーーン
アオ―――――――――――――――――――――――――ン
泣くのさ。
叫ぶのさ。
吠えるのさ。
苦しいから、だから、いっぱい。
辛い気持ちになったら、それなら余計にさ。
吠えるんだよ。
夜空に向かってさ、月に向かってさ。
どこまででも吠えるんだ。
アオ――――――――――――――――ン。
うまいでしょ。ほら、もう一回。
何度でも吠えるのさ。
アオーーーーーーーーーーーン。
オオカミが吠える理由? ほらあるじゃん。
仲間をさ、呼んでるんだ。
苦しいから、吠えてるんだ。
辛いから、だからこそ目一杯夜空に向かって、叫んでるんだ。
どこかの誰かにさ、お姉ちゃんのことを待ってる誰かにさ。
ねえ、お姉ちゃん。
僕さ、実は夢があるんだ。
それはね、僕が居たら喜んでくれる人を探すこと。
だってね、滅茶苦茶に広いこの世界には、きっと、きっとどこかにね。
きっとね、僕を待ってる人がいるんだ。
僕のことをね必要としてくれる人がきっといるんだ。
何でそんなの覚えたのって? 好きなアニメの歌詞の二番!
だからね、お姉ちゃんもきっといるよ。
お姉ちゃんのことが必要だって人、どこかにいるよ。
だから目一杯吠えよう。
辛いなら、もっと強く。
苦しいなら、もっと遠くへ。
泣きたいなら、もっと大きく。
吠えるんだ。
何度も、何度も。
そしたらきっといつか、お姉ちゃんのことを必要としてくれる人に届くから。
ほら、一緒に。
アオ―――――――――――――――――――ン
アオ―――――――――――――――――――――――ン
アオ―――――――――――――――ン
「アオ――ン」
ほら、もう一回。
きっとどこかに届くからさ。
オオカミ少年は夜に吠える キノハタ @kinohata
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