第17話 門

ミラージュの乗った馬車は、王都の外れのローニャ侯爵邸へ向かった。ローニャ侯爵邸の外門は無数の蔦に覆われ、石畳の隙間から所々草が生えて来ていた。


重厚感のある鉄門がゆっくりと開かれる。


ギギギイーー


馬車は、ローニャ侯爵邸の敷地へ入って行った。


ローニャ侯爵邸は広大な敷地の中に佇んでいた。黒と茶色を基調とした屋敷は、外門と同じように茶緑の蔦に覆われている。


馬車が、ローニャ侯爵邸の前で止まってから、ミラージュは馬車からゆっくりと降りた。


ミラージュを迎えてくれたのは、壮年の男性だった。

白髪が混じる髪を後ろで纏め、清潔感のある執事服を着こなしている。


「ようこそお越しくださいました。ミラージュお嬢様。主がお待ちです。」


執事は、ミラージュに対して恭しくお辞儀をして挨拶をしてきた。


「ありがとうございます。」


ミラージュは、執事の後をついてローニャ侯爵邸へ足を踏み入れた。


ローニャ侯爵邸の内部は、茶色を基調とした落ち着いた色合いの空間が広がっていた。エントランスの正面の階段の木製の手すりには複雑な彫刻が施され、窓から差し込む光で輝いている。赤茶色の長毛の絨毯には埃一つなく、隅々まで整頓されていた。


「主は、寝室におられます。ここ数年はベッドから離れる事が出来ない状態です。思考はしっかりされており、寝室から政務をされていました。ずっと後継者を探されていたのです。」


「ローニャ侯爵様のご子息は亡くなられたと聞きました。養子に向かえて頂き感謝しております。ですが、私でよろしかったのでしょうか?」

「ええ、もちろんです。ミラージュ様ほど相応しい後継者はおられません。主は貴方に会える日を心待ちにされていました。さあ、こちらです。」


ミラージュは、屋敷の最奥の部屋に案内された。


ゆっくりとドアが開かれ、中に入る。


その部屋は、とても明るかった。


大きな窓、白と黄色の壁紙、中央のベッドには青白い顔の老人が座っていた。


老人の目は白っぽい茶色だった。白い髪に所々黒髪が混じっている。


老人は、目を細めミラージュを見つめて言った。


「もっとこっちへ来て、顔をよく見せてくれ。ラナリーンの娘よ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る