第7話 秘密庭園

1ヵ月の王太子妃教育を、ミラージュは無事に終える事ができた。その間グラントは一度も会う事が出来ていない。グランは王太子として忙しく活動しているようだった。来月開催される舞踏会でミラージュは王太子の婚約者として紹介される事になっていた。ミラージュは、年老いたローニャ侯爵家の籍を与えられ、ミラージュ・ローニャと名乗る事になった。寝たきりのローニャ侯爵には、忙しく会う事が出来ていないが、曾孫として迎え入れられたらしい。



ミラージュは、安堵と共に困惑を感じていた。まさか貴族になるなんて思っていなかった。



母と二人でなんとか暮らし、母が亡くなってからは必死に働いてきたミラージュが、、、









その日、ミラージュは白の離宮を離れて王城へ向かっていた。今日は久しぶりに愛するグランに会う事ができる。王太子妃教育も終わった。亡くなった母の厳しい教育に対してミラージュは心から感謝をしていた。



グラントは、王城の秘密庭園で会う予定になっている。


その場所は、高い生垣に取り囲まれ、密会するには最適の場所だった。


ミラージュは、薄紅色のドレスを身に纏い、日傘をさして約束していた庭園に来ていた。


グランとの逢瀬を使用人達に見られるのは恥ずかしく、付き添っていた使用人をミラージュは下がらせた。


心地いい風がミラージュの長い黒髪をなびかせる。


庭園には、美しい大輪のバラが咲き誇り、太陽の光を浴びて輝いている。


ミラージュは、真っ赤なバラに近づいて行った。


真っ赤なバラは、キラリと輝く。


一瞬バラの花びらが銀色に光って見えた。






「まさか、こんな場所にいるなんて!探したのよ!」


ミラージュは、声がした方向を振り向いた。


そこには、ミラージュを睨みつけてくる銀髪の美しい娘がいた。


ミラージュにそっくりな顔立ちの娘は、以前見た時より窶れている様子だった。


顔色が悪く、頬がこけている。長い銀髪、豪華な衣装、ギラギラと光る紫色の瞳。




「さあ、一緒に来て頂戴。唯の町娘の癖に、ギガリア公爵家を誑かそうだなんて、御父様は大変お怒りだったわ。私たちの好意を仇で返すなんて、偽物のお前は、身の程を知るべきよ。」



銀髪で紫色の瞳をしたルルアーナ公爵令嬢は、顔を歪め笑い、ミラージュへ近づいてきた。


ルルアーナ公爵令嬢の背後に付き従う数人の屈強な使用人達と共に。




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