イーブン・フレンズ ③
警備ロボットと魔法使いを斬りながら上へ、上へと進んでいき、ついに本丸――最上層の部屋へと辿り着く。
そのドアを飛び蹴りで破壊してエントリーすると、中では組織の実質的リーダーと目されている初老の男が部屋の真ん中にしゃがみ込んでいた。
男はちょうど金槌を振り上げているところで、足元には数枚のハードディスクが並んでいる。犯罪の証拠となるデータが収められたものに違いなかった。
そして私と目が合うなり金槌を振り下ろしてしまおうとする――――――!
「させるかぁッ!」
「ぐおおっ!?」
ギリギリのタイミングで男を蹴り上げ証拠隠滅を阻止。
その身体を壁際へ殴り飛ばし、さらに刀で腹を貫き縫い留める。
ごぼっ、と血を吐きながらも男が顔を上げる。その口角をニヤリと上げて、不敵な上目遣いで私を見据えてくる。
「ぅぐっ……! 刀動かすなよ、痛えだろうが……」
「8年ぶりね
「8年ぶり……? あーあんたはあん時の! 随分と美人に――」
「
「ぐぅぁあッ……! そう怖え顔すんなよ……。ほれ、そこだよ」
初老の男改め鏑木は顎でガラス張りの窓の方を指した。
視線の先には窓を背にするように置かれたプレジデントデスクがあった。その向こうには高級そうな黒の椅子があり、黒髪の女性が外の方に向かって座っていた。
顔立ちまでは
あの髪飾りには見覚えがある。
いや見覚えがあるどころの騒ぎではない。
何故なら、私は。
あの半分の花の髪飾りの、反対側のものを、今でも持っていたから。
(夏祭りでさくらと一緒に買ったやつだ……。じゃあ、あれは本当に……!)
私は鏑木の腹を
そしてその、さくららしき女性に、恐る恐る歩み寄る。
心臓がバクバクと高鳴り始める。
それは嬉しさというより緊張から来るものだった。
何せ8年ぶりの再会だ。何と声をかければいいか分からないし、どんな顔をすればいいかも分からないし……大体この女性が本当にさくらだという確証もないし。
鏑木がただ口から出まかせを言っただけで、実際は赤の他人だという可能性もある。髪飾りなんていくらでも替えを用意できるのだから。
それでも私はデスクの正面までやってきて、両手をついて緊張を呑み込んで……その花の髪飾りの女性が、私の一番の親友であると信じた。
「ね……ねえ……」
「……………………」
「あなたは……
「……………………」
私の声を聞いたその女性は、しめやかに椅子を回して、こちらを振り返った。
半分の花の髪飾りを着けた彼女の面立ちは。
確かに、成長した私の親友そのもので
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