第2話赤紙

寺前が帰宅するために、ロッカーからバッグを掴もうとすると、赤い封筒の手紙が入っていた。

寺前は全身の毛穴から汗が吹き出した。

赤い手紙は、通称赤紙と呼ばれ全国の教師が恐れる手紙であった。

寺前は震える指で手紙の中身を取り出した。


【2022年全国高等学校「命の授業」の担当者は寺前純子先生と決定しました。一週間以内に村正高校1年2組の生徒を全員死刑に処する事を命令する】

寺前のロッカーの中に、拳銃、ライフル、サバイバルナイフなどが入っていた。

赴任していきなり赤紙が届いた事に、驚きと恐怖を感じた。この赤紙を無視すると、自分自身が殺される。

寺前は、同じく今年からこの高校に赴任したベテランの宮部に相談した。


「宮部先生、赤紙ってどう思われます?」

宮部はハイボールを飲みながら、

「全国の高校生に、緊張感を持たせる為に必要だからね。でも、自分に赤紙が来たらやだな」

「じ、実は宮部先生、あ、赤紙が私に届いたんです」

「何だって!」

「私にはできません。飼っていたハムスターが死んだだけで、泣く女ですよ」

「し、しかし、赤紙は他人に代わる事も出来ないし、断れば君は死ぬ。狩りだと思って殺るしない」

「し、しかし私に人殺しは……」

「明日、中川校長に伝えなさい」

「……はい」

「じゃないと、1年2組以外の生徒を殺す可能性があるからね」

寺前はビールを一気飲みした。

そして、決心したようだ。

翌日、校長に赤紙の件を話した。すると、今週の木曜日に決行する段取りになった。


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