夏あぐる謎
三斤
第一章 This fellow is wise enough to play...
プロローグ
「――よって彼らを不純異性交遊の疑いで退学処分とします。そして……
彼女の口から告げられた、相入れないはずの二つの事柄。
一切表情を変えないまま、彼女から俺に向けて差し出されている右手。
永遠に続くかと思うほどループする蝉の声。
紅潮した頬を隠すために上げられた両手の隙間から状況を伺う人間。
そして――両膝をつきながら、コンクリートの床に額をこすりつける俺。
きっとこの場に居る誰しもが、この状況のすべてを理解できていない。まったく関係のない通行人が見れば、痴情のもつれか何かと勘違いする筈だ。でもそれは、この学校ではありえないない話で。
だがそんなことは、今どうでも良い。俺がいま考えるべきはただひとつ、どうすれば、この窮地を乗り越えることが出来るのか。ただそれだけだ。
掛ける体重を間違えればすぐに割れてしまう薄氷の上を叩いて渡ることは出来ない。彼女から俺に許されているのはただ一言だけ。間違えれば、きっと底の見えない氷水の中に沈んでしまうだろう。
だから俺は覚悟を胸に、彼女にこう告げるのだ。
「どうか――よろしくお願いします」
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