一章:過去編

息苦しい世界


  高橋たかはし 真那美まなみにとって自身が生きるこの世界は息苦しかった


  彼女は生まれながら人目を惹く容姿に、運動神経もよく成績も優秀。これだけの物を得ていても彼女にとってこの世界は息苦しいものでしかなかった。

  彼女がこの世界を息苦しく感じさせてしまった要因の最初が容姿だ。生まれた時から17年間


「真那美ちゃんは可愛いねぇ〜」


「将来はきっと美人さんになるだろうねぇ〜」


「ほら!やっぱり私の言った通り真那美ちゃんは綺麗な娘に育ったよ!」


「本当に!うちのバカ息子の嫁にもらいたい!ってか、俺が嫁にもらいたいぐらいだな!」


老若男女問わずに褒められ続けた容姿。だが、真那は知っている。そう褒められる裏で


「容姿がいい娘は本当に特よねぇ〜。何でも自分の思い通りに出来てさぁ〜」


「本当本当!運動神経とか成績もあの容姿で誑かして誤魔化してるのよ!きっと!」


「本当にうちの息子の嫁にきてくれないかねぇ〜!そしたら、色々と……クヒヒヒヒ……!」


容姿がいい故の嫉妬からくる妬みがこもった勝手な想像に、気色の悪い妄想や視線。幼い内からそれらを知ってしまった真那美は、人を信用する事が出来なかった。


  そんな心が壊れてもおかしくない彼女を救ったのが……「スライム」だった。

  彼女が、何気なく借りた某有名RPGゲームをプレイした時、序盤から出てくるモンスター「スライム」に……


「はぅん♡このモンスター……すっごく可愛い♡」


一目惚れしたのである。そう彼女は「スライム」に恋をしたのである。

  それ以降、彼女は「スライム」を調べ、「スライム」を追い求めるように様々な「スライム」グッズを買い漁っていたのである。おかげで、彼女の部屋はスライム一色になったが、真那美は全く後悔しておらず、真那美にとって部屋だけが唯一の癒しの空間だった。


  しかし、唯一心癒せる場があっても、彼女にとってこの世界が息苦しいのは変わらない。


  真那美のたった一つの趣味とも言えるスライムは、なかなか家族に受け入れてもらえず、何度もやめたらどうかと言われる始末。故に、彼女はあえて成績上位をキープする事で家族を黙らせている。

  同じ趣味を持っている子を探せど、ゲームやアニメ好きな子はいても、真那美程スライムを愛してる者はいなかった。


  そして、何よりも1番の要因がやはり容姿だった。昨今、様々な芸能人がオタク的な趣味を持っていると公言していても、やはり、容姿がいい人間はオタクじゃないという偏見が強く、スライムじゃなくても、アニメやゲームに詳しい真那美だったが、そういう趣味を持つ集団の輪には入れず、一応は美咲や叶といった形だけの友しか得る事が出来なかった。


(あぁ……いっそ本当に漫画やアニメみたいに、スライムちゃん達のいる世界に転移出来たらな……)


いつも帰宅の道。美咲と叶のいつものあの男の子が良かっただの、真那美に全く興味が湧かない会話を聞き流し、ぼんやりと真那美はそんな事を考えていた。


『だったら来て……私達のいる世界に……』


「えっ?何?」


突然そんな声が聞こえて、真那美は顔を上げた瞬間、真那美・美咲・叶の3人の足元から眩い光が放たれ、3人はあまりの眩しさに目を瞑り……

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スライム大好き【スライムテイマー】少女のスライムな旅路 風間 シンヤ @kazamasinya

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