そして、彼らは動き出す……

  キャンベル王国の王城の一室。1人の老執事がその部屋の扉をノックする。部屋の主の許可を得た老執事が扉を開けた。


「失礼します。アルフォード様。各人からの報告書をお持ちしました」


老執事の言葉を受け、この部屋の主アルフォード第一王子は「ご苦労」とだけ言って、老執事からその報告書を受け取り読み始めた。

  やがて、その報告書を読み終えたアルフォードは、こめかみを抑えて溜息を一つついた。


「獣王国に、ドワーフ族やエルフ族、その上聖王国まで……裏で今回の討伐の件を調べつつ、真那美の捜索を同時に行っている……か……」


「やはり、他国でも今回の魔王討伐の一件に疑問を感じているのでしょう。アルフォード様と同じく」


「あぁ、その上情けない事にその疑問は大当たりだ」


アルフォードは、自身の部下と婚約者からの報告書を老執事に手渡した。老執事は「失礼します」と言って受け取り読み進める内に顔をしかめた。


「……これは……まさか本当にこのような事をするなんて……」


「あぁ。全く。クリストフは困った事をしてくれたもんだ……前々から私を恨む視線を感じてはいたが、まさかここまでの事をしでかすとはね……」


  アルフォードは、クリストフからの恨みがこもった視線を感じてはいた。アルフォードは彼と争う気もなかったので、基本放置していたが、まさか【勇者】のジョブ得て、このような愚行を犯すとは、最早放置出来ない段階になってきている。


「それで、どうなさるのですか?」


老執事はそう言うと、アルフォードはしばし口を閉ざし、軽く溜息を一つつく。


「残念ながら彼らが証言してるだけでは証拠にならない。確固たる証拠が無ければ、彼らを罪を与える事は出来ない。そこは、他国の者達を待つしかないだろう」


「では、アルフォード様。貴方様はクリストフ殿下達の罪を裁くつもりで動かれるのですね」


「当然だ。それが、父上の罪すら裁く結果になろうともな……」


「アルフォード様……」


「私はこの国の第一王子。守るべきは家族ではなくこの国であると何度も言われた。故に、その通りに動くだけだ」


アルフォードはそう言って立ち上がり、窓の暗い夜空を眺める。


「マナミ。問題の中心となってる君は一体何処にいるのやら……」

















「さぁ!可愛いメタルスライムちゃんのテイム出来たし!次の場所に向かうわよ!」


「ん。ご主人。次は何処に行くの?」


「そうねぇ〜……スライムBOX!」


真那美は一体のスライムを呼び出し、そのスライムを転がし、コロコロと転がったスライムが止まった場所を指差した。


「あのスライムちゃんがあっちに行けと言ってるから!あっちに行くわよ!ルリ!」


「ん。分かった。ご主人」


各国の思惑など知らず、真那美達はただひたすらにスライムを求め旅を続けていく……

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