真那美を殺害した者達は……(クリストフ編)後

  まず、彼は王城の図書館に向かった。今まで数回しか訪れた事がないクリストフを奇異の目で見つめる者達の視線を無視して、クリストフはかすかな記憶を頼りにある本を探した。


「……あった!これだ!!」


クリストフは目的の本を見つけると、その本を手にとって読み始めた。

  勉強嫌いで本を読むのも嫌いなクリストフだったが、何故だかその本だけは昔からじっくりと読むんです出来た。読み進めていく内に彼は自身の望みを叶える項目へと辿り着く。


「あった!あったぞ!!これだ!これさえあれば……クッククク!ハッハハハハ〜ーーーー!!!」


クリストフは思わず図書館で高笑いをあげた。図書館利用者がジト目で睨まれている事にも気に留めず、更に彼らからはクリストフが本も持たずに突然高笑いをあげてるようにしか見えていないとも知らずに……


そして、クリストフはその本に書かれた内容を受け行動を開始した。それは、他人のジョブを自身のジョブにしてしまうという禁断の術である。これが禁呪の類いである事を理解していたが、クリストフはそれでもこの術を利用するしかないと思ったのである。

  とは言え、他者のジョブを奪うと言っても、その他者がクリストフが望む【勇者】のジョブを持っているか分からない。それがこの術唯一の欠点だった。

  だが、クリストフにはなんとなく誰が【勇者】のジョブを持っているのか察していた。故に彼は賭に出た。ジョブ鑑定をされる前に、その者に禁呪を行使して、その者のジョブを自分の者にしたのである。そして、彼は見事に賭に勝利し【勇者】のジョブを得る事にしたのである。


  ここまでは順調に事が運んでいたクリストフだったが、国王が見つけたと言う異世界人。真那美の登場で状況が一変してしまう。

  最初こそは、最弱ジョブの【スライムテイマー】持ちである彼女を嘲笑の眼差しで見つめ、ただ、見た目だけは自分の好みだったので、自分の性の捌け口として使うのもいいかと考えていた。

  しかし、彼女は何故か人化する特殊なスライムをテイムしたら、あの【聖騎士】ジョブ持ちのジョセフを一撃で倒してしまったのである。その後も、色々と活躍していく真那美を見てクリストフは計画が狂っているのを感じ焦りを募らせていく。


(マズイ!?マズい!?マズい!?マズいぞぉ!?このままでは俺が華麗に魔王退治して王座やシャーロットを手に入れる計画が水の泡になるッ!!?)


真那美は地位や名声は望まず、魔王を倒した実績も渡すから、自分をこの世界で自由に旅させてほしいと願っていても、美咲の言葉やそもそも他者をあまり信用しない彼の性格もあり、真那美を邪魔に感じたクリストフは、美咲達と共に真那美の殺害を実行したのである。



「ふふふふ……思えば、マナミも哀れな奴だ。俺が用意した隷属の魔道具が効いていれば、俺達に殺されずにすんだものを……クッククク……!!」


最初こそ、クリストフは高い金で購入した、人を自分の意のままに出来る隷属の魔道具で、真那美を奴隷にしてしまうつもりでいた。

  しかし、何故か真那美には隷属の魔道具の効果が発揮されず、弾かれて壊れてしまったのである。故に、残念ながら真那美を奴隷にする計画は諦めたのである。


「まぁ、最後に、この国……いや、けの世界で最強の俺の役に立ち、その俺の手で殺されたんだから本望だろうさ!クッハハハハハハぁ〜ーーーーー!!!」


クリストフは酔いしれるように高笑いをあげる。そんなクリストフの言葉を扉越しでずっと聞いていたアイスブルーの美しい瞳の女性は、ゆっくりと立ち上がり、これ以上ここに用はないと歩き始める。


「相変わらず愚かな男。聞かれた困る言葉を大声でペラペラと喋るなんて」


女性はクリストフの部屋から離れた場所で立ち止まると輝く月を眺め


「マナミ……私が認めた貴方が、あのような男にやられるはずがない……貴方は今どこに居るの?」


そう言う彼女の姿は、側から見たら、愛しい人を待ち焦がれるように見えていただろう……




一方、その頃の真那美は……


「うわ!?本当だ!?レベル上がってる……しかも、レベル150って……ジョブのレベルって100以上まで上がるんだ……」(メタルスライムをじっくり堪能してようやく確認し始めた)


「ん。私もよくは知らないけど、確か人によって上限は変わるとも聞いた事がある」


「へぇ〜……そう言えば、ワルダークやその部下達ってレベルいくつだっけ?」


「ん。ワルダークはだいたい90近く。その配下達も確か80ぐらいはあった」


「……私達よく1人も死なずにワルダークの退治に成功したなぁ〜……」

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