真那美を殺害した者達は……(クリストフ編)前

  ワルダークを倒した【勇者】クリストフは、パーティーの主役という事もあり、他のメンバーは早くパーティーを退席したが、彼だけは最後まで残って貴族達の対応をしていた。そのパーティーも終わり、自室に戻って大きなソファに座るとすぐに高笑いをあげた。


「ヒャッハハハハハ〜ーーーー!!!これで今日からこの国は俺様のもんだぁ〜ーーーーー!!!」


クリストフは魔王を倒した事で自分がこの国の王になると思い完全に有頂天になっていた。


  クリストフはキャンベル王国の第二王子である。しかも、厳しく育てられた第一王子アルフォードとは違い、クリストフは国王からとにかく甘やかされて育てられた。

  それ故か、クリストフは傲慢且つ我儘な性格に育った。父であり国王である自分が次期国王であると思っていたが……


「やはり、次期国王はアルフォード殿下で決まりだろう」


「当然だ。アルフォード殿下はあの歳で様々な改革や政策を実行して全て成功をおさめている」


「それに対して、クリストフ殿下は王族の勉強もサボり、遊んでばかりで何もしない。いくら国王様がクリストフ殿下に甘いとは言え、何の実績もないクリストフ殿下を王にすれば各貴族や国から反発がくるだろう」


「では、今のうちにアルフォード殿下に我々の事を覚えていただかなくては……」


そう話す貴族達の会話を聞いたクリストフは屈辱で顔を歪めた。その貴族達をボコボコにしてやりたい衝動にかられたが、そんな事をすればますますクリストフの立場が悪くなるのは、流石のクリストフにも理解出来ていた。が、更に屈辱を与える出来事が彼を襲う。


「この度、我が息子であり第一王子のアルフォードと、クリムソン公爵家のシャーロット・クリムソンが婚約を結んだ事を宣言する!」


とある夜会の席で、アルフォードとクリムソン公爵家の長女のシャーロットの婚約を国王が宣言したのである。各貴族から惜しみない拍手と歓声があがったが、クリストフは……


(そんな!?何故だ!?父上!?何故シャーロットとあいつを婚約させたんだ!!?)


怒りと屈辱で血が出るのではないかと思う程拳を握りしめたクリストフが、婚約した2人を睨みつけていた。


  と言うのも、クリストフはシャーロットに一目惚れしていた。美しい銀色の長い髪に、誰もが見惚れる白い肌。人目をひく豊かな胸も、氷のようなアイスブルーな瞳も、何もかもクリストフの好みにマッチしていた。

  故に、クリストフはしつこくシャーロットに声をかけた。が、全く相手にされず、いつも氷のような冷たい眼差しを向けられるだけだった。

  どうにかしてシャーロットを手に入れたいクリストフは父である国王に何度も懇願したが、国王は困った表情を浮かべはぐらかし、結果アルフォードと婚約させたのである。


  それも仕方ない話で、クリムソン公爵家はこの国で1番の大貴族であり、王家の血族が何人もいる程の家柄である。

  そのクリムソン公爵家の娘と婚約すると言う事は、次期国王である者でなければならない。いくらクリストフに甘い王でも、貴族の反発を押し切ってまでクリストフとシャーロットを婚約させる事は出来なかったのだ。


「くそ!くそ!くそ!クソッ!!!あんか真面目だけが取り柄みたいなつまらない男に、王の座も惚れた女もとられてたまるか!!!」


しかし、いくら地団駄を踏んだところで、何の実績も出してないクリストフが、選ばれる事は永遠にない。

  が、そんなクリストフに実績を得るチャンスが舞い込んでくる。100年も前に倒されたワルダークが復活したという報せである。それを聞いたクリストフはニヤリと笑みを浮かべた。


「これはチャンスだ。俺がそのワルダークを倒せたなら、次期国王の座も、シャーロットも俺の物に出来るぞ!」


  そこで、クリストフはある行動に出る。それは、自身が【勇者】のジョブを得ようと動き出したのである。


  



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