神聖法王国

  「神聖法王国」。神が降りる山、グラウンシャリオンマウンテンにあるその国は、神に祈りを捧げる熱心な信者達が、種族を問わずそこで暮らしていた。

  そして、そんな神聖法王国の代表的存在で、『大聖女』のジョブを神より授かったマリアが今日も日課の祈りを捧げていた。


「大聖女様。お祈り中失礼します」


そんなマリアの前に1人の騎士のような装束を着た女性が姿を現した。彼女は、この神聖法王国騎士団の第一騎士団長リッカ。大聖女が祈りを捧げる時に声をかけるのは、この国では不敬に値するので、リッカはマリアが祈りを終えるピッタリのタイミングで声をかけている。


「構いませんよ。丁度終えた所ですから。それよりも、何かあったのですか?」


「はい。実は、先程キャンベル王国と獣王国ラザーハントの姫巫女殿から報告がありまして……」


リッカはマリアにキャンベル王国とヒミカがくれた報告を告げた。その報告を聞いたマリアは思わず呆れた表情を浮かべそうになるのをグッと堪えた。


「魔王討伐は大変喜ばしい話ですが……どうにもすんなりと喜べない状況のようですね……」


「大聖女様。我々はいかがしましょうか?」


リッカが問うてるのはもちろん、神聖法王国はどう動くかの話である。他国と同様に、魔王討伐の真意を探りつつ、真那美を捜索するのか?それとも、このまま静観をするのか?マリアはしばし考えを巡らした後に決断を下した。


「魔王討伐の件は他の国の方々に任せましょう。我々は別の案件の調査を行いましょう」


「別の案件とは?」


「キャンベル王国が行った大罪についてです」


「それは、異世界召喚についてですか?」


全ての国々共通で異世界召喚は禁止されている。唯一、神より信託を受けた大聖女が、この神聖法王国に神より選ばれし異世界人を召喚する事は許されている。故に、異世界召喚は禁呪扱いとなっている。

  が、真那美達が異世界人であると知ったマリアはすぐにキャンベル王国を問い質したが、「突然空より3人が降ってきた」と言ってのらりくらりとかわされている。ごく稀にではあるが、確かにそのような事故めいた異世界召喚もあるので、マリアは一旦引き下がった。


「それもありますが……リッカ。貴方は本当にあの第二王子が【勇者】だと思いますか?」


「いえ……あのような者がとても【勇者】とは……神聖力も魔力も我が騎士団の下っ端にすら劣っていますし……まさか!?マリア様!?」


「えぇ、そのまさかです。私は、彼が誰かが授かっていた【勇者】のジョブを奪ったのではないかと考えています」


基本、ジョブは神がその人だけに授ける特殊な力で、それは誰かに譲渡したりする事は出来ない。が、禁呪の中に他人のジョブを奪うという恐ろしい禁呪が存在するのを大聖女であるマリアは知っていた。


「しかし……かの禁呪は大量の魔力がいるはずで……まさか……そのせいで?」


  あまりにも魔力も神聖力も弱いクリストフ。その原因が禁呪を使用した影響ではないかという結論に辿り着くリッカ。


「分かりませんが……故に、しばらく神の間で神の言の葉を受けようと思います」


「分かりました。しかし、彼女の事は良いのですか?」


リッカが聞く彼女とはもちろん真那美の事である。他の国々で真那美が気に入られているように、マリアも真那美を気に入っていた。故に、リッカは気になってそう尋ねたが、マリアは微笑を浮かべ


「彼女は神さえも従えてしまう存在。それはもう、神に等しい存在でもあります。故に、私達が彼女を縛る事は出来ないのですよ」


マリアはルリが神たるスライム、ゴッドスライムである事を見抜いていた。故に、そんな神を従えている真那美は、マリアにとって崇拝する対象でもあった。


「それに……彼女はきっと再びこの国にやって来るでしょう。彼女がずっと会ってみたいと言っていた、我が国で噂の存在。エンジェルスライムを探しに」




一方、その頃の真那美は……


「あの!メタリックな色合い!メタルに輝くボディ!他のスライムと同じ大きさながら、どこか重量感を感じるそのフォルム!この世界にはいないと思っていたけど!やっぱりこの世界にはいたのね!出現率がとっても低いあの!メタルスライムが!!!」


次回!メタルスライムをテイム出来るか!?


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