地底国家グランドワン
ここ、ドワーフ族が住まう地中にある国家。地底国家グランドワン。そのグランドワンの国王であるガンテツは、急遽届いた2つの書に溜息を一つついた。
「父様!それで!キャンベル王国とラザーハントからの書に何が書いてあったのですか!?」
ガンテツの一人娘であるネネは目をキラキラしてガンテツの言葉を待っている。そんなネネにここに書いてある事を話していいものかと思ったが、嘘を言っても仕方ないのでガンテツは正直に伝える事にした。
「まず、キャンベル王国の報告では勇者達が魔王ワルダークを討伐したそうだ」
「当然ですね!勇者パーティーにはマナミ姉様がいらっしゃるのですから!」
自分が討伐した訳でもないのに、胸を張ってそう告げるネネ。
実は、勇者パーティーは聖剣を作ってもらうにあたり、この地底国家グランドワンに立ち寄っていた。
が、勇者パーティーの悲しき宿命か、その時に地底国家グランドワンを沈めようと魔族が動き、グランドワンを支えている守り神を消そうとしたのである。
そして、そんな魔族を倒したのもやはり真那美である。真那美はこのグランドワンの守り神がアレであった事もあり、それを消そうとする魔族にブチ切れボコボコにして討伐した。その姿にはやられた魔族の方が可哀想だとガンテツは思ったぐらいである。
それ以来、ガンテツの娘のネネは真那美に惚れ込み、真那美を「マナミ姉様」と呼んで慕っており、いつか自分も「マナミ姉様のような【スライムテイマー】になります!」と言い出す程だった。
そんな真那美を慕っているネにこの続きをどう伝えるべきか頭を悩ませるガンテツだったが、先に嘘をついても仕方ないと判断したばかりなので、正直に書いてある事を話した。
「ところが、キャンベル王国の報告だと、マナミは魔王城突入前に、魔族の奇襲を受けて死亡とある」
「は?」
「で、ラザーハントの【姫巫女】殿はその報告に疑惑を感じて調査を行うとの事だ」
ガンテツはそう言ってネネに届いた二つの報告書を渡す。ネネはそれを読み、言葉は発しないが、その手は怒りで震えていた。
が、ガンテツだけは冷静に考える。ガンテツもヒミカと同じく真那美は生きていると考えている。ならば、あえて調査は獣人族のものに任せ、こちらは真那美の捜索に全力を尽くし、真那美をこの国家に招き入れる方に注力すべきだろうと。幸いにも、グランドワンの守り神がアレである事が、真那美をこの国へと招く材料にもなるであろう。
そう方針を固めたガンテツが、ふとネネが先程までいた場所を見れば、そこにはすでにネネの姿なく呆然としていると、ガンテツに今日の作業進捗を伝えにやって来た、グランドワンで今1番ね腕利きで、聖剣も製作した職人であるサクラがやって来た。
「親方!今日の作業進捗報告に来たぜ!って、どうしたんだ?親方。そんなポカンとした顔して?」
かつては、ガンテツに師事していた事もあり、サクラはガンテツにいつも通りの口調でそう尋ねた。ガンテツはサクラの存在に気づいて、逆にサクラに尋ねる事にした。
「いや……ついさっきまでネネがそこにいたはずなんだが……?」
「ん?ネネの奴なら……『マナミ姉様の無念は私が晴らしてみせます!』って言って、もの凄いスピードで走って行ったぞ」
「あんのぉ!?バカ娘があぁ!!?」
ドワーフ族特有の血のせいか、すぐに熱くなって行動する所があるネネに、頭痛を覚えるガンテツ。だが、これはこれで結果オーライかと思いガンテツは自分が制作した椅子に腰かける。
ドワーフ族の守り神を救った人物である真那美が不当な扱いをされているのを、黙って何もしないというのも、他の国にいい印象をもたれなかっただろう。
「まぁ、ネネにマナミに会った我が国に来るよう伝えられなかったのが惜しいが……それがなくても真那美なら再び我が国に足を運んでくるだろう……」
ガンテツにはそれだけの事が言える程の確信があった。
何故なら、この地底国家グランドワンの守り神。地の精霊ノームの力を帯びた特殊型の魔物「ノームスライム」。それこそが、地底国家グランドワンの守り神なのだから……
一方、その頃の真那美は……
「ん〜……どれも見た事あるスライムちゃんばかりで、珍しいスライムちゃんはいないねぇ〜」←(と言いつつ片っ端から出てくるスライムをテイムしている)
「ん。ここは割と普通の環境の洞窟だから仕方ない」←(真那美がスライム探しに夢中の間、スライム以外の襲いかかってくる魔物は全部1人で倒している)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます