ここからようやく私達の冒険が始まる
「それにしても……こんなにも上手くいくとはねぇ〜。流石はルリね」
真那美はワルダークとの決戦時からクリストフ達に殺された時の事を思い返してそう呟いた。
クリストフ達が自分達を殺そうとする計画を知った真那美は、逆にこれを利用する事にした。要は自分は死んだ事にし、別人としてこの世界で好きなように生きようと思ったのである。そして、ルリと相談し計画したものをワルダークとの決戦時に実行した。
その計画は、まず真那美が【スライムテイマー】に内蔵されたスキル「スライムBOX」を発動させた事から始まった。
この「スライムBOX」は、テイムしたスライム達を別空間に入れ、好きな時に瞬時に出現させたり、空間の中に入れたりするスキルなのだが、これまでの旅で真那美の【スライムテイマー】のレベルが上がった影響で、「スライムBOX」も進化し、なんと自身もその空間に入ったり出たり出来るようになったのである。
これを利用し、最初「スライムBOX」を発動させた時、真那美は瞬時にスライム達のいる別空間へ。そして、ルリは自身の細胞の一部で真那美の分身体をこれまた瞬時に生成。真那美の分身体とルリがワルダークと戦っていたのである。その間、本物の真那美は「スライムBOX」の空間の中で、残っていたスライム達や戻ってきたスライム達と戯れていた。
「けど……本当によくあの王子様達を騙せたねぇ」
「ん。正直ちょっと大変だった」
自身の細胞の一部で作った分身体とは言え、ルリは最高レベルのステータスを保持している。これまで戦闘のほとんどを真那美に任せ、ジョブを全く鍛えていないクリストフの剣で貫けるはずもなければ、叶の魔法で燃やす事も不可能である。
なんとか、クリストフが刺せるレベルまで分身体を弱くし、幻覚や思考誘導を促す魔法をかけ、真那美は殺したので、魔王を討伐した事をさっさと報告に行こうという思考に持っていかせたのである。
「ん〜!でも!これでようやく私達の本当の冒険が始められるわね!けど……まずは……」
真那美はカバンを取り出してガサゴソと漁ると、中から何かの粉が入った小瓶を取り出した。
「いつかこうなるんじゃないかと思って買った染料粉……まさか本当に使う事になるなんてねぇ〜……」
それは、エルフの住まう国に立ち寄った時に買った髪の毛の色を変える魔法の粉である。真那美はさっそく頭の上からその粉を振りかける。
「どう?ルリ。私の髪の毛の色変わってる?」
「ん。黒から金色になった」
ルリはまた自身の細胞の一部を取り出すと、それを大きめな鏡に変化させ、その鏡を使って真那美の髪の変化を見せる。
「うわぁ!?すご!?本当に髪の色変わった!?ん〜……でも、こうなると黒い瞳も目立っちゃうかなぁ……」
このエクスティアで、黒髪で黒い瞳の持ち主は非常に珍しい為、服をこの世界の物を着ていても、真那美達はすごく目立っていた。故に、髪の毛の色を変える染料粉を使ったのであるが、あくまで髪の色を変えるだけなので瞳の色までは変えられない。
「ん。だったら私が魔法で瞳の色変えようか?」
「えっ!?ルリ!そんか事まで出来るの!?」
「ん。余裕」
ならばと、真那美は碧眼にして欲しいとお願いし、ルリが頷くと右手をかざしあっという間に真那美の瞳も碧に染めていった。
「おぉ!流石は私の可愛いルリ♡本当にもう最高♡♡」
真那美はそう言ってルリをギュッと抱きしめる。しばらく、ルリの気持ちいい抱き心地を堪能した真那美は、ようやく自分達の冒険を始める為に魔王城を去って行った。
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