高橋 真那美という少女
高橋 真那美。前の世界では高校2年の17歳。彼女は誰もが認める程の見目麗しい少女だ。
前の世界では、町を歩けばナンパかスカウトに声をかけられるのは当たり前。小中高共に何人もの男子生徒に告白された。その数100人以上と言われている。
が、どんなにイケメン男子に告白されても真那美は決してYESと言う事はなかった。何故なら真那美は……
「はぁ……!スライムちゃん……!やっぱり可愛い♡♡♡」
真那美にはどんなイケメン男子よりも、スライムの方が魅力を感じていたからである。
そもそも、真那美は世間で言うオタクと言われる女子であった。しかも、生粋のスライムオタクだ。彼女がスライムにハマったのは、小学生の時に友達に勧められてドラ○エというゲームをプレイした事がキッカケだった。
「何!?このモンスター!?超可愛くない!?」
ドラ○エの序盤に出てきた雑魚モンスターのスライムに一目惚れしたのである。
だが、ドラ○エのスライムは言わばその世界観に合わせて作られた可愛らしいモンスターだ。他作品で出てくるスライムを見た真那美の反応はというと……
「はわぁん♡顔はないけど、このプルッと丸みを帯びた姿がなんとも言えない愛らしさを感じるわぁ♡中に核らしき物があるのも可愛いポイントね!後!この服を溶かしちゃうスライム!キャラのエロさな魅力を引きたてていて!いい仕事してる!つまり!スライムちゃんは最高ね!!」
まさかの薄い本で描かれるようなスライムですらいいと思う程スライム愛好家になったのである。
だが、そんな真那美にこの世界は生きづらかった。幸が不幸か見た目が良く生まれた為、こういう人はオタク趣味なんて持っていないだろうという固定概念が強く、美咲や叶というよく喋るクラスメイトはいたが、趣味についてじっくり語り合える友達はいなかった。
最近では、芸能人でもオタク趣味を公言する人が増えたとは言え、真那美が好きな物はスライムである。それも、どんなスライムでも愛せる生粋のスライム愛好家だ。
真那美程のスライム愛好家はなかなかおらず、真那美は周りに人がいても何処か孤独を感じていた。そんな孤独感は癒すのがスライムだった為、真那美の部屋にはスライムに関する漫画や小説、ゲームにグッズに薄い本に至るまで、最早、真那美の部屋はスライム部屋と化していった。
「はぁ……一度でいいからスライムちゃんに会ってみたいなぁ……」
毎日、同じような会話ばかりする美咲と叶に若干うんざり気味になり、思わずポツリと呟いた帰り道。
まるで、その願いが通じたかのように、真那美達の足元に巨大な魔法陣のような物が出現し眩い光を放つ。そのあまりの眩しさに目を閉じ、再び目を開けると……
「……えっ?……ここ……どこ……?」
真那美達は中世のようなお城の、王様の謁見室と思われる場所で、これまた中世の王族や貴族、騎士のような人々に囲まれていた。最初こそ訳が分からず困惑していた真那美だったが……
(これってまさか!?異世界転移ってやつ!?異世界って事は……本物のスライムちゃん達に会えるって事!?マジ!?)
これが異世界転移だと理解し本物のスライムに会える事に心の中で声に出せない歓声を上げていた。
それから、美咲や叶が王様らしき人物に詰め寄ったり、王太子らしき人物が事情を説明したりしたが、真那美の耳にはそれらが全く入っておらず、本物のスライムとの出会いを心の中でずっと妄想していた。
そして、エクスティアでは力ある者に与えられるジョブの鑑定の儀に入り、美咲は【聖女】。叶は【賢者】を手に入れ、真那美は【スライムテイマー】という弱小ジョブを授かって、周り人間が色々騒ぎ始めたが、当の真那美は
(【スライムテイマー】!?つまり!私のジョブはスライムちゃんを仲間にして家族みたいに過ごせるジョブって事!?ひゃっほう!!?神様!!ありがとうございますぅ!!!)
心の中でもの凄い歓声を上げていた。ただ、周りからは呆然と立ち尽くしているようにしか見えない為、周りから弱小ジョブを授かって悲観にくれているように見られていた。
こうして、真那美は授かったジョブを活かして、夢に見たスライムに囲まれた生活を送ろうと決意したのである。
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真那美ちゃんに質問①
そもそも、見た目のせいで苦しむ要素があったなら、見た目を悪くして、地味で孤独な陰キャのように過ごせば良かったのでは?
「分かってないわね……もし万が一に……私が今回みたいに異世界転移して実際のスライムちゃんと出会った場合!見てくれが悪い私じゃスライムちゃんの品格を下げるし!何より!私に襲いかかってきてくれるスライムちゃんに失礼でしょ!!!」
……そういう問題なんですね……
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