勇者達による裏切り 前

  魔王ワルダークを倒した真那美とルリは、軽く息を吐いた後、倒れてるクリストフと自分と同じ勇者パーティーに所属しているメンバーの元に向かう。


「ん〜……ハッ!?ワルダーク!よくも汚いマネを!!」


ジョブ【聖女】を授かった美咲みさきの回復魔法によりようやく復活したクリストフが立ち上がり、ワルダークがいた場所を見つめるも、そこにはすでにワルダークの存在がなくポカンとするクリストフ。


「いや、もうワルダークなら私達が倒したわよ」


「はぁ!?マナミが!?まさか!?本当か!?」


クリストフは自分の周りにいるメンバーに尋ねるが、【聖騎士】のジョブを持つジョセフも、【賢者】のジョブを持つかなえも、自分を回復してくれた美咲も下を向いて何も答えなかった。

  そんな3人の態度で真那美の言葉が事実であると分かったクリストフは、自分が魔王を倒したという名誉を奪われたからか、憎々しい目で真那美を睨みつける。が、当の睨まれた本人は特に気にした様子も見せず


「それで、魔王は倒したんだからこれで私は自由に行動してもいいのよね?」


クリストフの方を見てそう言い放った。


  真那美はエクスティアとは違う世界、地球からやって来た転移者である。【聖女】と【賢者】のジョブを持つ美咲と叶も同様である。

  真那美はこのエクスティアに来てある物と出会える事に歓喜していた。故に、真那美は異世界転移した事を全く嫌に感じていなかったが、魔王討伐の勇者メンバーに強制的加入を義務づけられ、魔王を討伐したら自由に世界を冒険させる事を条件にパーティーに加わる事を半ば強引ではあるが了承したという経緯があった。


「……分かっている……お前は今日から自由にしてもらって構わない……」


クリストフが未だに憎々しい声色でそう告げると、真那美は歓喜の表情を浮かべ、万歳をしてルリを抱きしめる。


「やったわ!!ルリ!これで私は自由に貴方と気ままな旅が出来るわよ!!」


「ん。良かった。ご主人」


抱きつかれたルリは無表情でそう答える。真那美には、ルリも若干喜んでいてくれる事も分かり、抱きしめる力を強くする。


  が、歓喜に満ちている真那美は、背後でニヤリと笑っているクリストフに気づかなかった。


グサッ!!!!


「ッ!!?かはぁッ……!!?」


「ッ!?ご主人……!?」


背後から聖剣で貫かれた真那美は、口や刺された所から血を流し倒れる。ルリは慌てて真那美を支えようとするも、真那美が死んだ事によるものなのか、ルリは光に包まれそのまま消えてしまう。


  そんな2人の様をクリストフはニヤニヤと笑いながら見ていた……

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