魔王との決戦という名のプロローグ 後
真那美という少女から発せられた言葉に困惑するワルダーク。ジョブ【テイマー】には、いくつか種類があるが、魔物をテイム出来る【モンスターテイマー】の、限定モンスターしかテイム出来ない。しかも、魔物の中でも1番最弱と言われるスライムしかテイム出来ない【スライムテイマー】となれば、俗に言う最弱ジョブだ。その最弱ジョブの持ち主がこんな強者なオーラを持っているはずがないと思っているワルダークは目の前の少女を困惑の眼差しで見つめている。
「いくわよ!【スライムBOX】!いでよ!私のスライムちゃん達!!!」
そんなワルダークの困惑など知らない真那美は、スキル名らしき物を宣言すると、一瞬で部屋全体を覆う程の多種多様の大量のスライムが出現した。
その一瞬で起きた光景に少し驚いたワルダークだったが、直ぐに立ち直って少女の方を見る。
「愚かな……たかがスライムなどで我を倒すなど……ぐぼおぉ!!?」
不可能だとそう伝えようとした矢先、1匹のスライムが、先程クリストフの聖剣の攻撃を防いだ結界の壁をぶち破り、ワルダークに体当たりをしてきたのである。
最弱魔物であるスライムの体当たりで自身が張った結界が破られた事にも驚愕したが、スライムの初歩的な技の体当たりだけで、意識が一瞬吹っ飛びかけた衝撃を受けた事に困惑するワルダーク。
が、そんな困惑するワルダークを待つはずもなく、スライム達が次々とワルダークめがけて体当たり攻撃を仕掛ける。
「ちょっ!?貴様ら!?まっ……!?ぐほっ!?げほぉ!?がはあぁ!!?」
ただのスライムの体当たり攻撃に、強力な聖剣の斬撃を受けたかのようなダメージを負うワルダーク。何百……いや、何千ものスライムが1人に対して攻撃する様はまさにリンチそのものだが、そのリンチされているのが魔王ワルダークと聞かされ、それを信じる人が一体何人いるのだろうか?
「もういいわ!戻って!スライムちゃん達!!」
真那美がそう言うと、部屋を覆っていたスライム達は一瞬で消えた。スライム達の体当たりを反撃する余裕も与えられず浴びせられたワルダークは、もうボロボロで立つ事も出来ずに膝をついた。
「トドメよ!いくわよ!ルリ!」
「ん。分かった。ご主人」
真那美の呼びかけに、この時になってようやく声を発した少女ルリは、人の形が突然崩れゲル状になり、一瞬で銀色で虹色の輝きを放つスライムへと変わった。
(なっ!?バカな!?あ……アレは……!?)
ワルダークはその銀色のスライムをはるか太古の昔に見た事があった。
それは、エクスティアを支配しようと目論むよりも前、神域に入り自身も神と同格になろうとして、圧倒的な神々の力の前に屠られ、己では神にはなれぬと思い知ったあの太古の時。その神域にそのスライムはいた。というか、そのスライムにすら手も足も出せなかったのだ。
(まさか!?まさかまさかまさかまさかまさかぁ……!!?何故こんな所にゴッドスライムがいるのだあぁ!!?)
魔物の中には、伝説上として語られている存在がいる。それが、
その強さは当然地上のあらゆる存在をも凌駕する。まぁ、魔物とはいえ神だから当然だ。しかし、基本争いやヒトと関わる事を嫌う神魔級の魔物達は滅多に地上に降りてくる事はない為、エクスティアの人々はただのおとぎ話であるとし、その存在を信じている者は誰一人いない。しかし、実際に目にしたワルダークと、ワルダーク自ら語って聞かせた魔族達は違う。
(そんな!?バカな!?確かに部下の者が異様なスライムを従えた女がいると報告していたが……その異様なスライムがゴッドスライムではないかとは言ってはいたが……!?)
しかし、それが確かなら、神たる存在のゴッドスライムが人の従僕になった事を意味する。そんな人間が存在するはずないと、全く部下の報告を信じなかったワルダークだったが、目の前にその部下の報告通りの少女が、今度はゴッドスライムが聖剣に体を変えて真那美がそのゴッドスライムが変形した聖剣を手に取った。
「貴様は……!?貴様は……!?一体何なんだあぁ……!!?」
心の底から感じる疑問と恐怖感を言葉に乗せ、ワルダークは真那美にぶつけるが、真那美はそんなワルダークに
「さっき言ったでしょ。高橋 真那美。ジョブは【スライムテイマー】だって」
真那美はそれだけ言うと、手に取った聖剣を思いっきり振り抜いた。その聖剣から、先程のクリストフが放った斬撃の何十倍以上の聖なるオーラがこもった斬撃が放たれた。
「そんな【スライムテイマー】がいてたまるかあぁ〜ーーーー!!!?」
というワルダークの叫びも虚しく響き、先程のスライム達のリンチにより動く事すらままならないワルダークは、その巨大な聖なるオーラの斬撃にのまれ消滅した。
こうして、エクスティアを支配しようとしたワルダークの目論むは、1人の少女とスライム達によって潰えた。
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