【二階】 逆さまのパーティー会場
「ムリムリムリッ! ムーリー!」
ロサは薔薇の頭を振り乱して叫ぶ。
目覚まし時計は一度鳴らすと壊れて音がとまらなくなり、ロサは薔薇へと頭を変えていた。
その頭をまたすぐ変えなくてはいけない事態に陥り、ロサは悲鳴をあげていた。
「なによ。もう何度も変えてるじゃない」
「頭を変えるのはいいの! それがいや!」
直視するのも嫌で、ロサはそっぽを向く。
「これが一番適しているわ」
「分ってるけど……絶対にムリ!」
二階は上下が逆さまになっている奇抜な場所だった。
お菓子の揃った長テーブルやひとりでに音楽を奏でる楽器達が天井に並んでいる。それらは重力など存在しないかのように天井に張り付いていて、ロサの足元では豪華なシャンデリアが天井へと伸びていた。
逆さまのパーティー会場から上階に繋がる階段は天井付近にあって、どう足掻いても小さなロサでは届かない。
だから新しく頭を変えてそこへ向かおうとしたのだが。
「クモの頭なんてつけられないっ!」
シャンデリアの隙間を縫って探した結果、見つかったのはクモの頭だけ。
複数の眼を持つおぞましい大蜘蛛の頭部にロサは身震いを起こす。しかもこれは元々頭だけが落ちていたのではなく、発見した大蜘蛛の死体からガーネットが頭を引き千切ったもの。
断面が新鮮で生々しく、ロサは震えが止まらない。
「じゃあどうやって上に行くのよ?」
「それは……」
「自分の頭を取り返したいのでしょ?」
「そうだけど……」
「なら我慢なさい」
「ガマン……うぅ……」
ロサはおずおずと大蜘蛛の頭部を見て、鳥肌を立たせる。自分で自分を抱き締めた。
「ムリなものはムリ!」
薔薇の頭だがロサは泣いていた。
けれど薔薇の頭は涙を流さない。
だから、痺れを切らしたガーネットの猫パンチがロサの薔薇頭を吹っ飛ばした。
「きゃあああ! やめてっ! やめてよガーネット!」
「見なければ問題ないわ! オレは早く上に行きたいの!」
「でも! でもー!」
「このまま頭なしになって自我を消したくはないでしょ!」
「いやぁあー!」
頭を失って虚脱するロサの頭にガーネットが無理矢理に大蜘蛛の頭をつけた。
「ううぅ……」
「行くわよ。頭が一緒ならカラダも使えるわ」
「カラダも使うの!?」
「クモはお尻から糸を出すのよ? 知らないの?」
「知ってるよぉお……」
複数の眼球から涙を流し、ロサは頭のない大蜘蛛の身体を震える手で持って尻から階段へと糸を出した。
ロサよりも先にガーネットが糸の橋を器用にのぼる。
トボトボと、ロサも続いた。
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