第15話「中級クエスト①」
と言うわけで翌日。
俺はミーナさんとアルドさんを連れてプロローグ北西の魔物の森にやってきていた。
「それで……どうしこんなところに魔女様を連れてきているのよ」
ジト目で呆れたように言ったのはミーナさんだった。
不服なのか、少し機嫌が悪そうだ。
「うーん、まぁ。そこの坊主に連れてこられたんだ」
それに返して丁寧に言い返すロリ地味っ子系魔女。マジレスすると彼女の方がミーナさんよりも年下だ。それに加えて言っておくが今の俺の歳は17歳で、ドラゴさんは18歳で、ミーナさんは25歳。圧倒的に俺が年下で、一人だけ未成年だ。
まぁ、精神年齢は31歳だから許してちょっ。
「連れてこられたって言い方は心外です。大体、無理くり俺を雇ったのはドラゴさんの方でしょうが」
「あぁ? この魔女様の元で働けることが凄いことなんだぞ?」
「それは絶級魔法を見てから決めますよ」
「はぁ、生憎と絶級魔法はこんな場所じゃ放てないよ。それに、今日は中級クエストなんだろう? それなら最高でも上級魔法でも十分よ」
「使えないんですね、そうですか」
「クニキダっ」
俺がジト目で言い返すとミーナさんは俺の手を握って制止させた。
「ん」
「彼女は本物よ。私でも知ってるし、もちろん凄い魔法士なのは間違いないわ」
「と、いうことだ」
「……ま、まぁ、ミーナさんが言うならいいですけど。ただ、それとこれとは別です。働くなら報酬が必要なものです」
「はぁ……ほんと、徹底しているんだな。まぁいいけど」
魔法書を読み放題という形で報酬は割と得られるが、それだけだと調子に乗られそうだし、俺も初級冒険者で使い様とは言えF級スキル持ちと言う立場柄あまり弱そうにいるわけにはいかないんだ。
それに、どんなものか見たいって言うのもある。
「それで、別に彼女をパーティに入れる必要はないんじゃないの?」
「確かにそうですけど、ミーナさんにばっかり教えてもらうのも負担が大きいでしょう? 魔法士として見習うべき先生が二人いるくらいがちょうどいいと思いますし」
「ま、まぁ、そうだけど」
少しだけムッとするミーナさん。
やきもちだろうか、そうなら嬉しいな。
「んで、まぁ、私も私で冒険者で稼ぐって言うのは賛成だ。最近は拠点を変えようかなって考えてるし……少し慣らしておきたい」
「というわけでもあります。ミーナさんにドラゴさんがいれば、パーティの平均ランクも上がりますし、俺にとっても特訓がてら強いモンスターと戦うことができるっていう点でメリットがあるんですよっ」
「私には負担を減らしてギルドの仕事をやってもらうと……」
「ですねっ」
「それなら、そうか……ありがたい」
「えぇ。俺もあまり依存するのも良くないですし……初級になったからには経験して、早く中級に上がって色々旅してみたいんです」
「あぁ、そうか。移動で図書館……やってるふり……いいなぁ」
急に思いついたように呟くドラゴさんに俺とミーナさんを息を合わせて突っ込んだ。
「「あんたはしっかり仕事しろ」」
というわけで始まった真・凸凹パーティは魔物の森にて中級クエストに向けて準備をする。
正直なところ、二人がいれば準備などいらないが俺としても自分の魔法とスキルがどの程度通用するのか試してみたいというのがあった。
最近はミーナさんに許可されて色々と初級モンスターと戦えるクエストを受けさせてもらっていたがそれでは物足りないレベルまで来ていた。
初めて戦ったゴブリンと今戦えば10秒で片を付けられる。その程度には成長した。
そんなことを含めてみれば――このクエストは非常に都合がいい。
俺たちが受けた中級クエストはミーナさんをパーティに引き入れた原因でもあるジャイアントウルフの討伐。
そこそこ腕利きの中級冒険者が受けるくらいの依頼で、報奨金は銀貨1枚とかなり高価だ。将来的にはこのくらいのクエストは受けられるようになりたい。そのための位置確認が今回だ。もしも取り逃したらミーナさんかドラゴさんの魔法でねじ伏せてもらう。
とにかく、俺は全力でかかるだけだ。
森の中に入り、数分ほど。
魔物溢れる森の中で魔物に合うのはそう珍しくないがこの街付近で中級モンスターに会えるのはそうそうない。
しかし、入ってすぐミーナさんの一般スキル「
「止まれっ。来るぞ」
「は、はいっ」
「ういぃ」
隣で呑気そうに杖を構えるドラゴさんとは裏腹に腰に携えたナイフを構えるミーナさん。正直、たった一つのランクの差にどこまでの差があるかは分からないがこの感じを見るに色々と違うのかもしれない。
まぁ、俺はもっと低いからしっかり構えないとな。
すっと無詠唱で『
息を整え、さらに迫りくる殺気と凶暴性に全身の産毛が逆立つ。
数秒程無音が続いて、いきなりだった。
ゴゴゴゴゴ!!!!!
と凄まじい音をあげて、奴は突進を繰り出してきたのだった。
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