第12話「速読スキルの秘密」
そんなこんなで始まった凸凹コンビパーティは1カ月間ほど特訓を行った。
無論、ミーナさんを悲しませることがないように俺から頼み込んでやったのだが彼女も途中から楽しくなったのかかなり熱血に指導してくれた。
指導内容は以下の三つ。
一つ目に、俺が一人の冒険者としての基本的な力をつけること。
これに関しては毎日ギルドがあるプロローグの街を走りこんだ。朝と夜で2回ずつで、それぞれ大体10キロほど。勿論、普通に考えたらこんなやり方無謀ではあったかもしれないが、案外1カ月も続けてやっていると体力もつくもので、最後の一週間なんかはかなり楽勝だった。
今ならシャトルラン120回は余裕で越せる気がする。うん、絶対そう。
二つ目に、俺がジョブ「司書」として使うことができる魔法を限界まで覚えること。
実際、俺のジョブは冒険者としてたいして使えるものではない。
一般的に冒険者になったら
もちろん、それぞれの役職には役目と強みがあり、人によって別々の素質がある。
例えば、ミーナさんは主に戦闘系の魔法に対する素質があるので魔法士になったり、俺は無属性魔法が得意でスキル柄から司書になったりと様々。
しかし、その役職だからと言って他のことができないわけでもない。
違う役職でも、極めて近い役職ならその役職に似たようなことをすることができるのだ。俺だと向いているのは魔法系なので、魔法士か回復士などだ。
とにかく、魔法系が得意なら魔法を使えるようになった方が戦闘技術を学ぶよりも早いということが分かったので俺はミーナさんから攻撃魔法を中心に教わった。
ミーナさんはあんな性格ではあるが腕は本物。教える力もあり、俺もあっという間に網羅してしまったのだ。
まぁ、ミーナさん曰く。さして良くはない役職なのにほぼすべての属性の初級魔法を満面なく、それもたったの1カ月で使えるようになったのはかなり異質とのこと。
もしかしたら、女神はツンデレなだけで俺のステータスを良いものにしてくれたのかもしれないと今は思っている。
そして三つ目として、スキルについての知見を深めること。
これに関してはミーナさんからではなく、俺が自分に課しただけだ。
それも、魔法について魔法書や他の書籍を読んでいく中で思ったことがある。
思ったこと――というよりも、気づいたことに近いがとにかく一つの法則に気が付いた。
それは、この世界に置いてスキルというものはとても重要な意味を持つことだ。特に、各々に配られるギフトとしての固有スキルのことだ。
俺の場合はF級の笑われるようなゴミスキルだが、俺のスキルはジョブと言う形で如実に影響を与えている。
もちろん、他のスキルでもジョブや魔法の素質に直結することがあるくらいなのだが、一つ間違えてはいけないことはどんなスキルも相性と使いようが重要であること。
例え鍛冶師であっても、絶対にそれに応じたスキルがつくわけではないらしいのだ。それに、たとえいいスキルだったとして実際に使いこなせるかは本人次第であり、その組み合わせが悪い時も存在する。
例えば、ミーナさんが持つ固有スキルは「神速(A)」。
スキルの内容としては「超高速移動が一瞬の間できること」。
一見、使い勝手がよく強そうなスキルではあるが見た目とは裏腹にミーナさんとは相性が悪いのだ。
彼女のジョブは魔法士。実際の戦闘では中遠距離での戦いが多くあり、ほとんど指揮をしたり動いたりはしないらしい。
ただ、そこの矛盾点は彼女の前衛姿勢の戦闘スタイル変化に落とし込んでいるため、あたかもいいスキルのように見えるだけとのことらしい。本人曰くだがな。俺のスキルよか良いだろうと思ってしまうけども。
だからこそ、つまり何を言いたいかと言うと、俺も俺自身のスキルと向き合うことが大切なのだ。その一環としてスキルそのものを知ることも大事である――てなわけだ。
まず、スキルには2種類のものが存在する。
一つは固有スキルで、もう一つは一般スキルだ。
一般スキルと言うのは何個も取得できるスキルで。経験値が上限に貯まるごとに取得することができる。またスキルにもレベルがあり、取得する以外にもレベルを上げて影響力を高めると言うこともできたりもする。
そして、固有スキルに関しては言わずもがなだが、レベルに関しては一般スキルのレベルアップ方法と一緒だ。しかし、レベルが上がるかどうかは本人とそのスキルとの親和性が重要になるらしい。
今のところ、俺のステータスは
・国木田学(17歳)
レベル:5/100
職業:冒険者
種族:異世界人
スキル:
固有スキル:
魔法属性:無
性格:慎重
経験値:0/500
でこの前よりかは格段に強くなった。ようやく初級冒険者の中でも中堅になったくらいらしい。
もちろん、このステータスを見てくれたら分かる通り、俺の固有スキルはレベルアップしている。
俺のスキルはゴミスキルと揶揄されていたがそうとは限らなかった。それはさっきも述べた通り、司書との相性が大きく関わっている。
司書と速読にはかなりの共通点がある。
それは、書籍を速読できることだけではなく。
『ありとあらゆる魔法を高速で読み上げ、詠唱を短縮させ、無詠唱により発動することができる』
というものだった。
つまり、魔法士としての世界の課題。詠唱時間をなくすことができると言うわけだ。
まぁ、これに気が付いたのは色々な書籍を読んでいく中で「固有スキルの中には途中で覚醒することがある」という文言を見つけ、ミーナさん同様に魔法の特訓の中で試しまくって見出した技なのかもしれないな。
ギルド内、酒場テーブルにて。
「おい、さっきから何自分の冒険者カード見てるのよ」
「——あっ、さーせん師匠」
「師匠って呼ぶな。ミーナでいいからっ」
「ミーナ」
「……やっぱなし。恥ずかしい」
やっぱり、特訓後のギルドでビールのつまみで見るミーナ・ストラルシアの照れ顔は格別だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます