第8話「魔法と速読スキル」
王立魔法図書館。
とても豪勢な家が立ち並ぶ道の中でもひときわ目立つ大きな建物。中に入ると、見た目よりも広く見える内装に、天井まで届く本棚が延々と置かれているまさに「ザ・図書館」と言わんばかり。
まぁ、図書館だから図書館っぽい方が当たり前か。
というご託は一度置いておいて、俺がこの図書館にある本を読んで得て知識を説明しよう。
まず、俺の持っているスキルの話だ。
俺が持っている固有スキル「速読スキル」はようやく実感することができた。
とにかく、速読できる。名前の通りであるがそのスピード、その早さは尋常ではないし、何より速読という名前に囚われないところに強みがあると俺は考える。
まず、一つ目。
特徴としては文章を早く読むことができる。
早さで言うと大体1秒に1ページくらい。軽く目を通すような感覚なら10ページを10秒で読むこともできるほど。凄まじい速度で正直俺も声が出なかった。
何せ、今までの人生では考えられない感覚だったからだ。体も、頭もすべてが早いのに、俺の心だけが取り残されているような気分。
すっと1秒目を通すだけで内容がグッと凝縮されて頭の中に入ってくる感じだった。
それが例え今まで読んだことがない本でもなのだから、我ながら恐れ多いとさえ思う。知識を深めるという点ではおそらくこのスキルに右に出るものはないくらいだ。
まぁ、もしもこの世界に特殊な記憶スキルとかがあれば別だが——スキルというものは本来一人に一つだけ付与される別々の物らしいのであるかどうかすらも定かではないし、今は考えるのはやめておこう。
そして、二つ目。
それは速読するにあたって記憶力が高まるという点だ。とにかく物覚えが早い。1ページ読んで理解して次のページに行っても絶対に忘れない。そんなに覚えてもごちゃごちゃになると思ってしまうがそんなことは全くなかった。
溜まっていく知識を頭が勝手に整理して、頭の中にしまってくれるのだから気を付ける必要すらない。
読んで理解するという動作で覚えることができる。
そんなこんなで汎用性が高いスキルだとは感じた。このスキルで俺の魔法や体力、攻撃力がパワーアップするわけではないがそれでも多くの魔法書を読みまくれば、多くの魔法を覚えれば話は変わるかもしれない。
魔法を覚える。
ただこれが簡単なことではないらしい。
俺が読んだ魔法使いの入門書にはある言葉が出てくる。
そこででてくるのは「魔法属性」という言葉だ。
まず、魔法と言うのは人間が作り出したものであるということ。
起源はかなり昔まで遡り、昔の人々が不便な暮らしを豊かにするために発展させたものであり、場面によって使い分けていたと書いてあった。
場面と言うのは水場、食卓、山などなど。
それを今では属性と言う言葉で使い分けているらしい。属性には火、水、木、土、光、闇、無の7つ。または七色魔法と言う。
言い方は置いておくとして、属性には人によって適性があり、例えば俺の場合冒険者カードには無属性と書いてある。なので、おそらく俺は無属性の魔法を中心に覚えていくと言いようだ。
ただ、属性の適性がないからと言って覚えられないというわけではない。
属性と相性が良く、普通に魔法を行使するよりもパワーアップしたりするだけで属性の適性が無くても覚えられるし、普通に使うことができる。
属性の適性があれば早く覚えられたりもするらしいがその辺は個人差があるとも書いてあり、簡単に言えば向き不向き、得意教科と普通な教科と苦手な教科があるとくらいに思えばいい感じだ。
また、魔法には序列がある。
冒険者の序列と似ていて下から初級、中級、上級、絶級、超級、聖級、神級と7段階。ただ、それに当てはまらず序列からも外されている魔法が一つだけ存在する。
それが魔級というもの。
種類として簡単に言うなら魔王が作った魔法の事を言うらしく、人間で扱えたものは一人もいないとされていて、なかなか興味深いものだった。
ただ、今の情勢的にこの魔法が使えても褒めらえたことでもないし、俺のポテンシャルじゃあ使えなさそうだから気にすることはないだろう。
それに、ミーナさんの魔法の説明で魔級が取り上げられなかったのは良い意味を持たないからっていう側面もありそうだしな。
とにかく、序列的にも普通の魔法使いは中級まで使えれば及第点なのでまずはそこから頑張ってみよう。
「ふぅ……なかなか面白いな、魔法って言うのは」
かれこそれ1時間と少し。入門書から魔法書、魔道書、そして歴史書や地図にも目を通して力を付けたところで俺はギルドへ戻ることにした。
「あぁ、てか、この魔法書持って帰りたいな」
聞いてみるとここにある魔法書は申告せず持って帰っていいらしく、時間に慣れ ば勝手に手元から消えて図書館に戻るとのこと。
いやはや、この世界の魔法の技術には驚かされるが本当に便利でいいな。召喚前の世界で言うなら科学技術と同じ意味合いが魔法技術なのだが、こっちの方が便利なものが多い気がする。
もちろん、この世界にYouTubeやカクヨム、ラノベなんていう娯楽はないが……これはこれで面白い。
ここからの生活が少し楽しみになってきた。
そんな気がしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます