第7話「異世界に来て早々デートに出かけるのか、俺?」
「いやまさか、あの受付嬢のお姉さんが上級冒険者だったとは思わなかったなぁ」
受付嬢というのは先ほど俺に罵声を浴びせたミーナさんの事だ。
名前を「ミーナ・ストラルシア」。
この「モノローグ」と言う冒険者にとっては始まりの街の冒険者ギルドで受付嬢として働いているお姉さん。
腰まで伸びる長い金髪に、宝石のように輝く碧眼を持っていて、そして何よりも目に付くのがあの大きな胸。
スタイルも良く、あの豊満な胸にここの男冒険者は虜になって街を出られないとか何とか。
まぁ、本当かどうかは置いておいて確かに気持ちは分かる。
あそこまで美しくてエッチで、誰からも好かれる天使、いや女神のような人はどこにもいないだろう。
噂では彼女の胸はFカップを超えているらしい。
本当、俺のF級スキルとランク付けが一緒なのが大変腹立たしいが俺もその胸を一目見るなり吸い込まれそうになった。
あれはもう、このギルドの看板娘と言って異論を言う者はいない。
それも、昨日までの話だがな。
いつも冷静沈着で、お淑やかで、静かで、それでいて笑顔を絶やさない。加えて冒険者の心配もしてくれて、楽しいことがあれば一緒に喜んでくれるような素敵な女性でギルドの女性は皆彼女に憧れている——————という設定だったらしい。
しかし、どうやら俺がその化けの皮を剥がしてしまった。
実は、乱暴な言葉を使っちゃい。
実は、一度も彼氏なんていたことなくて。
実は、彼氏を募集中で。
実は、心配性で。
実は、ツンツンしているところがたくさんあり。
実は、元上級冒険者だった。
なんていうあまりにも多すぎる暴露。
今までの彼女とは違いすぎてついて行けずに落胆している冒険者もちらほらいたぐらい。
それももう、反応が凄すぎた。
ミーナさんの勢いもだが、冒険者もウエイトレスも、他の受付嬢の視線を掻っ攫うほどで。
『え、ミーナさん嘘でしょ?』
『あ、あれは……だ、誰なんだ⁉』
『おかしい、絶対におかしいよ!!』
『なんなんだ、あの怪力は⁉』
俺に色々言ってからバックヤードに行く前に何せ、テーブルをたたき割ったんだからな。そりゃ、今まで幻想を抱いていたものとしては相当なショックだっただっろう。
それに、絡んだことが一切ない俺でさえビビった。
優しそうなお姉さんだと思っていたがために、ギャップの落差がえぐかった。
「……でも、まぁ俺はああいう方が好きなんだけどな」
昔からツンデレキャラには目がなかったし、確か幼少期の幼馴染がツンデレだった気がする。
きっとそこから根付いているのだろうけども。
って、そうじゃないな。
んなことはどうでもいい。
まず、ミーナさんとおち会う前にいろいろとやりたいことがある。
というのも、ギルドから出る前に他の受付嬢にこんなことを言われたからだ。
「あ、あの……魔法使いさんで、すぐにモンスターを狩りに行きたいなら、その……図書館で魔導書でも借りてみるといいですよ」
「えっ——」
「その、助けになるか分かりませんが……」
「あ、ありがとう、ございます……」
「はいっ、ではミーナさんとのデートも楽しんで!」
と言った具合で、なぜか重要そうなことを教えてくれた。
てか、最後めっちゃにやけてたし……俺、別にデートに行くつもりはないんだけどな。
いや、待てよ……俺たちって今から二人きりでどこかに行くんだよな?
ん、でーと、でいと、デートって言ったか? さっきの子?
思考が落ち着き、考えがまとまっていく。
「えええええええええええええええええええええええええええ⁉」
思わず大きな声が飛び出てしまった。
通りを通る人が一斉に俺の方を向いて、不思議そうに見つめている。
あぁ、やってしまった。驚きのあまりやってしまった。
「んんっ」
何とか咳払いをして誤魔化すとそのまま元に戻っていく人々。
ふぅ、まったくこまったものだな。俺も。
何せ、その響きをこの30年にもわたる人生の中で一度も感じてこなかったし、仕方ないと言えば仕方ないとは言えよう。
俺は一生童貞、女子なんて生物とは無縁の存在!
幼馴染にはフラれて、幼馴染を分捕りやがったいけ好かない顔だけの性格クソブスなイケメンを憎み、結局は冴えない男、冴えない社畜として生きていた——そんな最底辺の人間なんだぞ!?
そんな俺がデートに行くのか、これから⁇
やばい、頭の中で考えたら急にドキドキしてきた。
この年にもなって俺、こんなことでドキドキするなんて……もしや乙女なのでは?
なにそれ、めっちゃかわいぃ~~ってクソキモイだろうが!!!
「ん、いや待てよ……」
顔を触り、窓を見つめる。
そこに映るのは若々しい俺だった。
そうだ、今の俺はあれだ。確か17歳だったはずだ。
それなら、初めてのデートでもおかしくはないはずだ!
うん、そうだな、ひとまず安心だ。
「って、こんなことしている場合ではないか、まずは魔導書を借りに図書館へ行かなくては!!」
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