第6話「いきなりモンスターを狩りに行けるわけないじゃないですか!!」
「って、いきなりクエストなんて受けれるわけないじゃないですか!!」
と、先程色々と手続きをしてくれた巨乳なお姉さんの声がギルド内で響き渡る。
俺も俺であまりにいきなりの事で頭が真っ白になり、体が固まって何も言い返せない。
「あなたはバカなんですか? アホなんですか? ハゲなんですか⁉ ゴブリンにでも頭を乗ったられたんですかぁ!? そんな簡単に行けるわけないって分からないんですかぁ!!!!!!」
すると、言い終わってから自分が大きな声を出してしまったことに気が付いたのか、「はっ」と小さな悲鳴を上げて口元を抑えた。
「あ、あの……っ」
呆気に取られていた俺もさすがに何も言わないのはどうかなと感じて声を掛けようとすると、彼女はスッと視線を逸らした。
「(い、いき……さけ……ん、は、ず……ぃおm……させn……でょ……)」
真っ赤な頬に、真っ赤な耳。
手で隠れて見えなかったが口も何やらもごもごと動かしている。
まぁ、なんというか、いきなり怒鳴られたことに関しては驚いたが恥ずかしそうにする受付嬢のお姉さんはなんだか可愛らしく見えた。
元がいいとこういうところで得をするんだろうな。
俺のこの普通顔……いや、偏差値50にも満たない雑魚顔じゃ無理だろうけど。
って、そうじゃなくてなんで駄目なのか聞いてみないとな。
「……だ、大丈夫です?」
「……あ、あなたのせいでっ」
「え?」
「っくぅ……も、も、も……」
「——も?」
「も、もう!! 私はこれでも冷静キャラで売っていたのよ!! どうしてくれるのよ!!」
途端に叫び出す彼女。
今度の今度はさすがに周りにいた冒険者たちも「やばくね」という視線を向けてくる。
「お、ちょっと——っい、いきなり叫ぶのは」
「な、なんなのよあなた!! いきなり来て、冒険者になりたいっていうから手伝ってあげたのにスキルが速読って!! そんなので冒険者やっていけるわけないでしょ
!!」
「え、何を言って——」
「だいたい、私は今頑張って彼氏作ろうとしているんだからね! いきなりその皮剥がそうとしないでよぉ!!!!」
「はぁ⁉」
大きな声が劈くように響き渡る。
何、彼氏? そんなの知らないんだけど!!
てか、なんで急にそんな話をしてるんだ? 俺はただ、クエストを受けようと
「何々?」
「なんか、すっごいこと起きてるんだけど」
って、あれ。やばい。なんか視線が。
てか、そんなこと言われるのはヤバいって。
俺ってまだここ来てからすぐだし、つてもないから変な噂流すのはやめて——!!
「なにあの男……ミーナさんをナンパしようとしてるの?」えと、なんでダメなんですか?」
「ははっ、聞いたことねえスキルだな。どーせ弱いんだろうけどぉ」
「速読? 何、本でも読むのかしら」
「あいつ、俺たちの女神のミーナさんをぉぉ!!!!」
「泣かせたら許さねぇぞ?」
手遅れだった。
それに、背中に向けられる視線の圧がやばい。これはさっそくやらかした。終わった。俺の異世界生活本格的に終わったんだけど!!
「あ、あのぉ……別にそう言うことはぁ~~」
手遅れではあったが流石に本人には勘違いしてもらいたくない。ここは何としても誤解を解かなくては。
「俺はその、えっと……ただ、冒険者になってお金を稼ぎたく……っ」
「そ、そんなの知ってるわよ!! せっかく心配してあげたって言うのに、聞かずにぃ!」
「えぇ……」
「も、もぉ……何してくれるのよ、ほんとにぃ」
いや、正直話が見えないんだが。
心配してくれたのはありがたいが……別に怒らせることしてないだろうに。
それに、俺にだって色々と生きていくためにやらなきゃいけないことがあるわけで。
「そ、それは嬉しいんですけど……別に俺、心配とかしなくても」
「死んだらどうするのよ……冒険者な年に数百人が命を落しているのよ」
「え、そ、そうなんですか?」
頬を赤らめたまま、上目遣いに神妙な面持ちでコクっと頷くミーナさん。
あ、うん。
もうめんどいから名前で呼ぶことにしました。
「ま、まじか……大丈夫かな」
「だから言っているのよ。私は、自分の受け持っている冒険者さんを死なせたくないの! それに命を落しているのだって半分が調子に乗って魔物狩りに行った初級冒険者なんですよ。まだ初級冒険者のクニキダさんには任させられません、こんな仕事!」
「あ、ありがとうございます……すみません、ほんとに。俺、まだ勝手が分からなくて……」
「いえ、分かってくれるのならいいんですよ、もう。あ、でも!」
何かに気が付いたのか口を開けたまま固まると、俺の首根っこを掴みだした。
え、俺、なんかされるの?
「私のイメージを曲げたのは責任取ってもらいますからね!」
耳元に響きミーナさんの声。
怒っている様で優しい後味が耳に残り、一瞬だけぽわんとしてしまった。
「——あ、え!?」
「それで、とにかく! このクエストはまだ受けられません! このクエストのランクは中級以上からです! だいたい、その強さでジャイアントウルフを狩ろうなんて無理な話ですよ!」
「そ、そんなになのか……」
「えぇ、ですので無理なものは無理です。それと、あなたはのジョブは司書なんですから、まずは魔法を覚えるところから始めないと駄目です!」
そうか、まぁ、言われてみればそうだった。
俺は魔法使いということになっているが実際に魔法は使えない。というか、使い方が分からない。
なんとなく、いきなり実践で戦えばいいだろ――って思ってたがよくよく考えれば俺のスキルはゴミスキルなんだ。
俺はこの異世界でチートスキルを持つようななろう系主人公じゃないんだ。もっとしっかりしないと。
「そ、それは分かりました」
「よろしいですっ」
「でも、その……じゃあ、簡単なクエストとかも受けれないんでしょうか?」
「簡単なクエスト……? あるにはありますよ、もちろん」
「どういうのがありますか?」
「薬草採取だったり、庭の手入れ……あとはペットの捜索とかですね」
「そ、それをやるって言うのは……」
「いいですけど、ランクを上げたいのであれば平行して自らモンスター退治に出たり、魔法の練習をしないといけないですよ?」
「お、俺、お金がないんですよ」
「……そう言うことでしたか、だからあんな高額な依頼を」
ジャイアントウルフの討伐兼肉の採取は銀貨100枚。今の俺からしてもかなりの高額だ。
効果の価値は国や大陸によって違うらしいが、ここでは鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、そして金剛貨となっている。
こっちに来てから日もたっていないので日本円に直すのは無理だが、宿屋一日泊まるだけで銅貨10枚ほどだ。ただ、これは安い宿でさらに割引しているらしいから本来なら銅貨20枚以上はかかるだろう。
ちなみに銅貨は100枚で銀貨1枚だ。他も全部同じくらいだな。ただ、白金貨以上は貴族でもないと使わないらしいけどな。
「でも、どうしたらいいですかね。魔法も覚えたいし、お金も手に入れたいし」
「……そうね、なら」
そう吐き捨てると、周りが騒めき始めた。
ん、何々? 何かヤバいことでも?
「ま、まぁいいわよ。元上級冒険者として、私が色々レクチャーしてあげるわよ。それとお金の方は一緒に弱い魔物を倒すクエストを受けてあげるわ」
まるでツンデレ化のように、照れながら強気で呟く彼女に周りの冒険者たちは騒然だった。
「え、いいんですか!?」
「えぇ、いいわ。死なれても困るし……それに」
「それに?」
「な、何でもないわ!! ほら、今日は私昼前までだから! 時間になったらギルドの前に来なさい!!」
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