第2話「俺のスキルはFランク」
目が覚めると、そこはとある神殿の広場だった。
眩しい光が立ち込め、目が慣れない。
そして、なんだ?
何か話声がする。
人か?
シルエットでしか分からないが何やら人らしきものが見える。
神官? らしき人々が手を合わせていてて、魔法使いらしき人たちも10人ほどいる。
さらに向こう側には何十人もの人々、民衆かな……いや、豪勢な服装をしているから、王族? いや貴族か?
昔、歴史の資料集で見た中世ヨーロッパの貴族の絵画の服装に似ているからだから特にわからないが……。
んで、なんで俺はこんなにも多くの人に囲まれているんだ?
そうこうしていると徐々に白い光が晴れていき、辺りが明るくはっきりと見えてくる。
すると見えたのはさらに大勢の人々。
民衆? 平民のような人間もちらほら見受けられ、その全員が俺を丸く囲いながら見つめていた。
みんなが固唾を飲んで俺を見つめている。
いや、俺だけじゃない。
俺の周りには何が起きたか分からないような顔をした人が他に三人。
一人は金髪パーマで、いかにも学生時代の俺が嫌いそうなチャラそうな男子大学生。
その隣には黒髪清楚な凛とした可愛らしいセーラー制服を着ている女子高生。
そして横には、メガネをかけていてでも少し筋肉もある勉強が出来そうな男子高校生。
最後に、汗まみれになりゆるゆるになったネクタイをだらりと下げているおかしなスーツ姿の俺。
彼らとも目を合わせたが、やはり分かってそうな人もいない。
なぜこのよく分からない知らない人同士のメンバーが集まっているのか。そんなことも含め、何も理解できなかった。
「>+*+LLMOIM<+>??*+‘<*+」
「<+>*+>‘PL‘P<*+<<>KOB*>+*>*」
「<L<P<+<!!!!!!」
すると、俺らの方に近づいてくる何人かの神官と貴族(多分)。その後ろには俺たちを囲むようにして歓喜をあげている人々。
なんだ、こいつらは何を嬉しがっているんだ?
いや、ていうかこいつら名に話しているんだ?
状況も分からないし、というか言語も分からない。
知らない言語をつらつらと話していて、少々耳が痛い。
まるで高校の時の英語の授業みたいじゃないか。
それによくよく見てみれば――こいつらの顔、西洋人か? いやどこか東洋人っぽいけど……。ただ、俺と3人は顔からして日本人に見えるし……。
そうこう考えていると歩いてきた神官と貴族たちが後ろの魔法使いに何かを指示した。コクコクと頷き、近づいてくる魔法使い。
大きな紫色の魔石が入った長生きの杖を持ち、金や銀で装飾されている豪華なローブを纏う年寄りの顔がフードの中から見える。
なんか、やばそうだな。
俺がそう思うと同時に彼は杖をこっちに向けて、大きな声で叫ぶ。
「>+>*+>‘<‘<+>>*+>!!!!!!!」
すると、ギュイン!!! と頭の中で変な音がして、気が付くと————
「ふぅ、これで言語が分かるな」
「こ、これはっ‼‼ ありがとうございます、魔法王閣下っ」
「改まるでない、すべては神の思し召しだ」
魔法王閣下?
何か偉い人なのか?
しかし、そんな考察をしているとハッとした。
俺は神官と貴族の言葉が理解できるようになっていた。
「あ、あの……っこれは?」
目の前にいる神官が俺に気付き、こう答える。
「あなた方は私たちの国の未来を守るために召喚しました」
「み、みらいを……守る?」
「はい、そうです。私たちの国【ヒストリカケル】は日々世界を支配を企んでいる魔大陸の魔王の影響を受けているのです。このままではいつ私たちの国の食糧がなくなり、民たちが飢えて滅んでいくか……時間の問題なのです」
これがあるあるのテンプレートってやつか。
よくアニメで見たことある展開だぞ!
「もちろん、あなた方が引き受けてくださるのなら私たちは最大級のもてなしと準備を約束いたします。この国最大の名誉、英雄級冒険者の称号を授与いたします」
「そ、そんなものを……」
「えぇ、ですからあなた方4人であの最強の魔王【ゲルニカ】を倒してほしい」
と、至って真面目なトーンで話される。
俺たちは顔を見合わせる。どうすべきか、と。
しかし、おそらくだがこの状況、今までに見てきたアニメだったら確実に王城でもてなされて最強になる展開だと思われる。
慎重なのは大事だが、ここまで言われて考えておきますだとあまりにももったいない気がしてならない。
すると、一人の女の子がこう尋ねた。
「あのっ……本当に、魔王なんてものが倒せるんですか」
さすが今時の若者。理解が早いな。
それとも異世界転生ものは流行っているのか、巷で。
「えぇ、あなた方が召喚されたと言うことは高確率でみなさんには神からのギフトが送られているはずです。なので、まず、皆様にはそのギフト、つまりは
そうして、かれこれ2時間ほど。
なぜだか俺は王城の裏門で一人突っ立っている。
「お、お前は無能だってさ、お見送りが俺なのはほんとまぁ……うん、辛いだろうが謝礼としてこれでなんとか頑張ってくれ」
冴えない顔をしている軍の二等兵が銀貨が5枚入った袋を渡しながらそんなことを言ってくる。
遡ること1時間くらい前。
少し休憩を挟み、服をこっちのものに変えた俺たち4人は神殿の最上階にある「水晶室」という部屋に連れていかれた。
名の通り、等身大の馬鹿でかい水晶が置かれた部屋で、各冒険者組合に設置されているものの何倍もの大きさがあるらしい。まず、冒険者組合がよく分からんが。
とにかく、この水晶玉は手をかざすとステータスをみることができるらしい。
みんな嬉しそうに自分の能力を見る中、俺の出番が回ってくる。
「ふぅ」
意味のない深呼吸をして、手をかざす。
するとでてきたステータスはこうだった。
・国木田学(17歳)
レベル:1/100
職業:無職
種族:異世界人
スキル:
固有スキル:
魔法属性:無
性格:慎重
経験値:0/500
こうしてみると何もかもがおかしかった。
なぜなら、俺の前に終わらせた3人は固有スキルが上位魔法攻撃無効化(S)Lv.5、無限障壁(S)Lv.5、上位物理攻撃無効化(S)Lv.5なんていうものだったからだ。
あまりにも落差がひどい。
なんだ、速読って?
それに(F)ってなに?
もしかして、序列でもあるのか?
A,B,C,D,E,FってそのF!?
それならヤバくない?
いや、まだそうと決まったわけではない! しっかりと説明を――
と後ろにいた神官の視線がとがったのを感じながら、俺はスキルの説明欄に目を通した。
『いつでもどこでも、書籍を素早く読むことができるスキル。レベルが上がれば速度も速くなる……etc.』
と。
終わった、意味が分からん。
これは弱すぎる。
馬鹿すぎて言葉が出ない。
現実世界ならまだしも、この世界には魔王とやらがいるらしい。
ましては冒険者として生きていくのが普通なくらいの弱肉強食な世界なんだろ、この世界。
俺だけの固有スキルが「本を早く読める」なんて。
唯一無二のスキルなんだろ?
それなら他の三人みたいに強そうなやつじゃないのか?
これでは、あまりにもゴミ。
これならまだ筋力アップとか足の速さが少しだけ早くなるとか多少雑魚めなスキルでもよかった。
しかし、そう思ったのも束の間。
スキルを見て絶句した神官や貴族は俺を一瞥するなり、軍の将校らしき人にに耳打ちしていて……気がつけばこうして捨てられている最中だ。
優しい顔を見せながら言ってくる二等兵に、長年の仕事で会得していた秘奥義『愛想笑い』で言い返す。
「ま、まぁ……俺は無能ですしね、ははっ。ありがとうございます。では、そちらも見張り頑張ってください」
「あ、あぁ……。よかったら軍に入ることもできるから、その時はいつでも言ってくれ」
「おう」
そう言って背を向け、涙交じりにそこから旅立つことにした。
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