永遠、センチメンタル

三日月てりり

永遠、センチメンタル

 突然ではあるけれど、本当のことを言ってしまうと、僕は切羽詰まった少女からその忙しない感情を伝播されて、電脳の機械に感染してしまったのだ。だから僕の内には電波があるし、衝動も巻き起こる。衝撃が体の内を暴風雨にしているんだ。悔しいし、悲しい。そんな気持ちが嵐になって体内を駆け巡っている。直径179cmもある身長で、「長身だね」って言われたって、170cm台なのは変わらない。1cmの未熟さを幼児の頃に庇う方法があったなら、10代までに健やかさを手に入れられたなら、きっと180台の人間になれていたのかな、なんて妄想を繰り広げながら買い物に行くと、マーケットはもうすぐ爆発してしまう太陽のことを考えて、宇宙のどこかに存在するかもしれない人間の移住先への切符を販売していたの。だから買って、もうすぐ182cmに成長できるね、なんてことを思いながら足の骨を切って伸ばして繋げる手術を受けた。いつか自分が死んでしまった先に、自分が生きていられたであろう星に辿り着けるなんて素敵なことだな。夢を見ながら叫びたい。野生児の咆哮のように叫びたい。ウオアーオ、アオアオ、ウオアー。そう囁きながら、同じ文言を叫んでいる自分を想像して恥ずかしくなった。182cmになった僕は、世界の機構を最大限に活かして手妻を繰り広げた。都庁が消え、北海道が消え、大陸は消えた。海は消え、星は消え、太陽も消滅した。無。あーあ、世界は一体どうなってしまったんだろう。全ては無くなっても僕の意識はこの通り存在している。意識とは何だろう、魂とは、世界とは、何だったのだろう。解らないまま時が過ぎ、何も無くなった世界で永遠の自問自答に帰結した。


 彼が、時空の狭間に究極的に押し込められて閉ざされている時、僕は彼の帰ってこれる場を用意するため、DIYで世界を改築してみた。彼の属する次元は多次元のうち一つでしかなく、閉ざされていった世界を僕は別の世界へ繋げて開放することが出来るのだ。エターナル・フォーエバー。彼は普通の世界へ戻ってこれる。僕の力で戻ってこられる。僕たちが前世で永遠の結びつきを誓った恋人同士だったことや、どちらかが行き詰まった時に助け合える間柄であることはどちらにとっても嬉しいものだし、僕が彼のためになれるのなんて、それこそ好きな人のために自分を捧げられる、何よりも嬉しいことなんだ。さあ、生き返っておいで、僕の恋人。


 僕は自問自答を繰り返す意識から自我を取り戻した。それは、僕が忘れていた永遠の恋人の手によるものだった。僕はそんな大事な人のことも忘れてしまっていたのに、彼は僕を助けてくれた。なんてありがたくて嬉しいことだろう。僕は靴を鳴らして踊りだし、彼の手をとって抱きしめあった。二人で楽しく踊って、永遠を断ち切った幸福を、永遠に味わい尽くした。



2021/12/16

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