第十四話 ランド そして 貴族

「くそぉ! 何で俺達まで! 」

「俺達が何をやったってんだ! 」


 ここはルーカスの町の憲兵団の牢屋ろうや

 事をくわだてたランドやその従業員達はもちろんの事、何故かこの町の憲兵団の一部団員も入っていた。


「貴様らも同罪だ」

「きちんと調べはついている」

「何の話だ! 」

とぼけるなぁ! 同じ憲兵としてずかしいぞ! 」


 牢屋ろうやの外にいる憲兵が怒鳴り上げる。


「カーヴ工房の元工房主カーヴ殺害の情報を意図的に錯綜さくそうさせたな? 」

「! 」

「おかげで裏を取るのに手間てま取ったわ! 」


 ガン!とおりる音が響く。

 その音に反応してか中にいる憔悴しょうすいしきったランドがすくみ上がる。


 捕まっている元憲兵達はカーヴ夫婦殺害時にさきんじて到着し、上に報告した者達だ。


 それぞれ所属部隊はバラバラで統一性とういつせいが無いがランドとの接点を洗う上で彼らの容疑が浮上した。

 そして捕まえこうしてろうに入れられているのだが本人達からすれば何故バレたのかわからない。

 いやそもそも罪の重さを分かっていない。


 ランドが裏で金をにぎらせ彼らにさせたのは暗殺者を送り込んだ後死亡した二人を発見し、少し間違った情報——事故であると上に報告すること。ただそれだけである。

 彼らが実際に手を上げたわけでもないし、死を偽造ぎぞうしたわけでもない。

 ただ『事故』と報告させただけだ。


 しかしランドにとって予想外だったのはカーヴが異常に強く、また暗殺者達を何回か撃退してしまったことだ。

 そこで作戦を変更し個別に殺害。

 最後の最後で暗殺者がミスを犯したのならばそれは戦闘音で起きたニアにみられ、気付いてなかったことであろう。


 それを引き金として今回の逮捕に至っている。


「まぁいい。そこで処罰が確定するまで頭を冷やしておけ! 」


 そう言い元同僚どうりょうはその場を去った。


 ★


「父上。浮かない顔してどうされましたか? 」


 一人の少年が執務しつむ台をはさんで聞く。

 ここはルーカスの町の村長たく——ルーカス子爵の執務しつむ室。

 大きなやかたで中年の――しかしがっしりした体格の男性が少し顔を上げる。


「……実はこの前『森の破風はふう』がやってきた」

「!!! 」


 それを聞き少年は驚く。


 森の破風。

 Sランク冒険者の中でも特に神出鬼没しんしゅつきぼつ特異とくいな存在として知られている。

 それが何故今ここに、と思うも言葉を飲み込み落ち着く。


いわく「部下のしつけがなっていないようだね。ボクが直接しつけようか? 」との事だ」

「……流石にSランク冒険者と言えど政治に口出しは」

「ああ。無理だ。無理だとも。だがな、いかんのだ」

「何がでしょうか? 」


 そう言う息子を見ながら言葉を選ぶように口を開く。


「……時に……。彼女がどこに住んでいるのかわかるか? 」

「いえ。そもそも神出鬼没しんしゅつきぼつですし」

「そうだな。そうなってるな」

「そうなってる? 」


 その言葉に軽くうなずく。


「彼女は思ったよりも身近にいる。いや、遠いが、神出鬼没しんしゅつきぼつという程でもない」

「どこに住んでいるのですか? 」


 父の遠回りな言い方に少し声のスピードを上げて聞く。


「……魔境だ」

「はぁ? 」


 それを聞き、驚く。


「ま、魔境?! あそこはとてもではないですが住める場所ではありませんよ」

「普通なら、な。だが彼女なら可能だ。しかも我々は彼女に魔境からモンスターがあふれないように時折モンスターを間引まびくように直接依頼している。格安でな」


 そして分かった。

 父が森の破風——つまりシャルロッテに頭が上がらない理由が。


 本来ならば魔境にも騎士や兵士等を派遣はけんしてモンスターの間引まびききをし、外にあふれるのを防がなければならない。

 少しでもれ出れば一大事だ。

 しかもそれには多大な費用がかかる。


 しかしSランク冒険者への依頼ということでそこにシャルロッテを一人置くだけでそれだけの人材育成費に人件費、食糧費等を浮かせ他の事業に財源ざいげんてることができる。

 頭が上がるはずがない、と少年は思った。


「しかし……流石に政治介入は」

「……政治介入ではないよ、彼女がお願いに来たのは」

「どういう」

ようはある魔技師殺害に関わったと思われる憲兵達の身辺調査だ。本来我々がやらなければならない事をきちんとやれてくぎされただけだ」


 ふぅ、と少し息を吐き天井を仰ぐ。


「「悪しき者に破滅をもたらす森の風」とは良く言ったものだ。名付けたやつは相当そうとう御仁ごじんだろう」

「して、身辺調査は終わったのですか? 」

「ああ。全員黒だった」


 そうですか、と言い軽く窓の方を向く。

 少年子息しそくはまだ彼女が起こす旋風せんぷうを知らない。


 ———

 *最後までお読みいただきありがとうございます。本作は中編コンテスト用に作成しました。今後の展開も考えておりますので中編コンテストの結果に関わらず、コンテストが終了後にこの続きを書こうと考えております。


 最後になりましたがお気に召しましたら【フォロー】や【★評価】して頂ければと思います。続きはこの後に投稿しようと考えておりますので続きが気になる方はフォローそのままでよろしくお願いします。


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