第十三話 明日への一歩
「ほほほ、まさかとは思いましたが
「……少し気付いていたよね、パトリック君。というか君は何故ここにいるのかな? 」
「何をおっしゃいますか。建物の
「確かにそうだけど」
コンテスト会場から帰るとそこにはパトリックが複数の
立ち話もなんだということでニアが中に入れたのだが、彼女が今日の事を話して笑う。
全く失礼な奴だ。
彼が言う通り確かに
しかし仕事が早いな。
「して、あのランドは捕まったのですかな? 」
「今頃厳しい
「……師匠。何故憲兵がいたのですか? 」
首を
ああ、ニアには言ってなかったね。
これは
「通報しただけだよ」
「通報? 何をですか? 」
「高利貸しのこと、カーヴの殺人容疑の事を」
「ええ! でも……証明できるものなんて」
「あるじゃないか。なぁバトラー」
「ええ。あの時回収した書類が」
そう言うバトラーにどういうことかわからないような表情をするニア。
ふむ。まだ気づいてない様子だ。
「……ボクは借金が
「え、あれだけ頭を下げていたのでてっきり」
「あんな奴ら、反省するわけないじゃないか。実際襲撃もあったし。だから通報した。それに証拠もある。書類は回収済みだから後は町長に報告。これだけでも十分だけれどもボクの名前を出したら一発さ」
「ははは。シャルロッテ様の前で余計なことを言った者達の
「……分かって言ってるのかい? それもと
「おお。それはご
「君も
「
急にパトリックの雰囲気が変わる。
ニアが
「我が商会——『パトリック商会』の専属魔技師になりませんか? 」
「………………えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 」
その言葉に驚くニア。
この男も中々に
さては最初会った時から囲うつもりだったな?
「条件は言い
「し、し、し、師匠~」
「はぁ。いいかい。最終決定はニアに任せるけれどあくまで参考程度だ。それでもいいかい? 」
「は、はいぃ」
「ボクとしては、やめておいた方が良いと思うよ」
その一言でパトリックから少し冷たい雰囲気が流れる。
「別に専属になることが悪い訳じゃない。しかし魔技師として更なる高みを目指すのならば専属ではなく様々な依頼を受けるべきだ。そこから得られる経験は
それを聞き、
少し沈黙が過ぎ考えがまとまったのか「パッ」と顔を上げてパトリックの方を向いた。
「パトリックさん」
「はい」
「この話。無かったことにしてください」
「……よろしいので? 」
「私は、もっと上に行きたいのです! 」
バッ! と立ち上がりそう宣言する。
「……わかりました。意思は固そうですね。専属は
こいつ、最初からそのつもりだったな。
取り
「依頼ならば受けます」
「ほほほ、ありがとうございます。ではワタクシはこれで」
「あ、ちょっとパトリック君。待ってくれたまえ」
「どうなされたので? 」
不思議がるパトリックとニアを引き連れて工房の裏に出た。
ここも久しぶりだ。
だが
「バトラー」
「
バトラーが返事をするとアイテムバックからドラゴンを出す。
その大きさに驚くニアとパトリック。
魔境産だからね。このくらいは普通にいるよ。
「これはカーヴへの手土産にしようと思っていたのだけれど、カーヴがいないからニアにあげようと思ってね」
「え? 私ですか?! 」
「ああ。そしてこれをどうするかもニア
「こ、これを買い取れ、とおっしゃるのですか?! 」
「ボクからは何も。判断するのはニアだ」
軽くニアに目線を送る。
借金、という言葉に反応してか
そしてボクの方を向いて来た。
「な、な、な……」
「な? 」
「何でこれを先にださなかったのですかぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」
え、そこ?!
★
無事に? ドラゴンを買い取ってもらったニア。
同時に大量のお金を手に入れたわけだが
道具の修理もあるだろうし、何より練習用の素材を
パトリック君は少し興奮気味で自分の店に帰っていった。
よくドラゴンが入るだけのアイテムバックを持っていたな。
もしかしてパトリック商会というのは大きな商会なのだろうか。
ま、あれをオークションにでもかければ一財産。
元は十分に取れるだろう。
「じゃ、ボクもこれで」
「え? 」
「え? 」
席を立ったボクとニアの目線が合う。
ん? おかしなこと言ったかな?
「し、師匠。居てくれないんですか?! 」
「何を言っているんだい?! ボクだって
「おいて行かないでくださいよ! ここに住んでください! 」
「いや、でもね。そう言われても……」
「この店で働いてくださいぃぃぃ!!! 」
そう言うニアの顔にカーヴの顔が被る。
『師匠! 頼みますからここで働いてください! 』
『君には奥さんがいるだろう? ボク達が
『そこを何とか』
『しつこい! 』
ああ、そうだったね。
あの時の判断は――あの時は間違っていなかったと今でも思うけれど――結果としては間違いだったね。
「ん~」
頭の後ろを軽く
「あ~、少しの間だけだからな! 」
「師匠!!! 」
君の娘は確かに
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