第六話 商人『ランド』 一
「やはり
「おや。君もこっちに来たのかい? バトラー」
「ええ。あちらは少しお取込み中なようで」
取り込み中、ね。
「さてさてバトラー君。ボクはこの一件大体予想がついているのだけれども君はどう思う? 」
「私も予想はついていますが、私に意見を聞きますか? 」
「なに、人の話を聞き多角的視点で物事を考えるのは
そう言うと扉から目を離す。
軽く
そして結果が出たのか
「
「やはり向こう側には商人がいるのか」
「ええ。どうも
そこで少し考える。
「ふむ。ならば恐らく退職も
「このカーヴ殿を邪魔に思う者がご両親に手を下し、職人を引き抜く。そして生活できない所に手助けという名の借金」
「ま、悪徳商人がやりそうな
「さて何故カーヴ殿が邪魔なのでしょうか? 」
バトラーの言葉を受けて深く椅子に座り直す。
そこなんだ。
何故カーヴが邪魔なのかだ。
カーヴという魔技師工房自体この地で
確かに
普通町一番の魔技師を殺すなんてそんな
かなりのギャンブラーかそれとも成功するとわかっていたか。
成功、ね。
「ああ。なるほど」
軽く天井を見上げてぽつりと呟く。
バトラーがこちらを見る気配がする。
それに合わせることなく言葉を放つ。
「つまりだ。この町での仕事はカーヴが居なくても成り立つようになっただけだ」
「? どういうことでしょうか」
「町でカーヴ以外がやっても同じ
「しかし、だからと言って殺すようなリスクを負いますでしょうか? 彼は人族でした。ならば寿命を待てば」
「店だ」
バトラーに目を向け言い放つ。
軽く首を
「カーブが邪魔なのではなく、この店が邪魔なんだ。だから殺した」
「店? 」
「ん~。この工房は
「裏で手を組んだ、ということですか? 」
「貴族、もしくは町を取り
「しかしそれだと相手側に
「さぁ? ボクは商人じゃないから商売の方はわからないけれど、貴族が
はぁ。嫌になるね。
これだから、全く。
「さぞ
ピンと人差し指を立て、そう言いながら立ち上がり少し扉の方を見る。
「ねぇバトラー。ボクは平和主義なんだ。何事も平和的に解決すればいいと思っている」
「……」
「でもね、バトラー。それでも相手が向かってくる時どうすればいい? 」
「……」
「ボクはね。欲望に満ちたクソ野郎を叩き潰さないと腹の虫がおさまらんよ」
そう言いながら扉のノブに手を掛けた。
★
「どうもシャルの予想が当たっていたようですね。
「ボクにはまだ
「何を言いますか。獣人族は基本的に五感に
「君はフェンリルだろ? 」
「……」
少しの沈黙が流れる中少し歩き目的の部屋の前に着く。
中からは「父さんが残したこの工房は売りません! 」「ならば早く
「さてジェンソン君」
「ジェンソンではありませんアンソン、いえバトラーです」
「君、今間違えただろう」
「そのようなことはありません」
キリッとした顔で扉の向こうを見るバトラー。
しかしボクのこのシャルロッテ・イアーにはきちんと「アンソン」という単語が聞き取れた。
完璧・
全くもって面白い神獣を拾ったものだよ。
さて、と意気込み前を向く。
「気乗りしませんか」
「まぁね」
「……今ならまだ間に合いますしいつものように引き返してもいいのですよ? 」
「おや、君がそう言うなんて珍しいね。バトラー」
「悪徳商人、特に貴族関係を嫌っているのはよくわかりますので」
「優しんだね。ときめいちゃう」
「おちゃらけないでください。で、大丈夫なのですか? 」
「誰に物を言っているんだい? ボクは
バトラーが扉を
★
「早くお金を返してくださいよ。もうこちらも待つわけにはいかないので」
「な、ない物は無いのです! 」
「ならばこの家を売ってください。そうすれば――「ドォォォォン!!! 」」
「はぁぁぁい! お掃除の時間のようだね」
「見た所、大きなゴミが一つありますね。これはいけません。早く取り除かないと私の
おや。固まっているね。
まぁ無理もない。いきなりの登場だ。
「ニア。何ゴミと話しているのかな? 」
「え、ええ?! 」
「ゴ、ゴミ?! 俺がゴミだと! 」
「違うのかい? 」
「私はきちんとした人族だ!!! 」
両手に宝石付きの指輪に豪華な服。
「!!!
「これは大発見ですね。シャル」
「ああ。そうだとも。
「ち、近寄るな! この変態が! 」
「変態? 」
このボクを変態呼ばわりするのかこのゴミは。
なるほど人を怒らせるやり方を良く知っているゴミだ。
「シャル。抑えてください。アイテムバックに手をやらないでください」
「ゴミはゴミ箱へやるのが常識だろ? 」
「そうですが何やらこのゴミはニアと
「ほう。ニア。その話、聞かせてくれるかい? 」
高速で「こくこく」と
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