第735話 魔人サグリバス

「なんと、1万もの援軍?」

「はい、だいたいの数しか分かりませんが」

 インラントの街に戻ったジェロは、帝国の増援部隊のことについて報告している。

 戦争奴隷の処理をせずに王弟の前に魔人を連れていくことは許可できないと言われたので、ジェロを主にした契約魔法は実施済みである。


「で、その男が増援部隊にいた魔人ですか。あっさり捕獲されて戦争奴隷にされているのは流石と言うべきか」

「その増援部隊に対して打撃は与えて来たんだろうな?」

 相変わらずジェロが嫌いで口だけのノイナイアー侯爵。

「荷馬車はかなり焼き払いましたので……」

「兵糧を焼き払ったということか。近隣の村などへ略奪に向かわれたらどうする?」

「ノイナイアー侯爵、あの近辺にラーフェン王国の村は存在しませんので」

 魔術師団のレーハーゲル副団長が助け舟を出してくれる。

「いや、それにもともとテルガニ伯爵には帝国内の工作に向かって貰ったのだ。帝国の増援部隊は我々がこのインラントの街で迎え撃つ分担だったのだから、荷馬車の焼き払いだけでなく軍の規模、指揮官の名前などの情報をもたらしてくれたことへ感謝すべきだ」

 ルネリエル王弟がさらにかぶせてくるのでノイナイアーは俯くしかない。


「では、私たちは再度帝国内に潜入するために向かいます。途中で遭遇する増援部隊の荷馬車などは引き続き攻撃を行なっていきますので」

「助かります。よろしくお願いします」



「じゃあ、サブリバス。これらは返しておこうか」

 ルネリエルへの報告を終えた後、彼の悪魔アグリモンはヴァルの眷属にし、さらに捕まえたときに取り上げていた所持物を本人に返していく。

「魔導書も目新しい魔法はなかったし、それ以外のものも変わったものはなかったな。ただ、魔人が魔法カードを持っているなんて珍しいよな」

「そうかな?魔法カードを開発したのが先祖らしいから、たまたま手に入ったものを持っていただけだよ」

「!」

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