第652話 ジークセンへ飛行旅
「急なお話ですね。でも確かに、脅威となる魔法使いの排除が目的だったのであれば」
ラーフェンでも一緒であった皇国軍のドゥケ司令官とデュクロ副官にだけ別れの挨拶を行う。何かと面倒そうなベルカイム王国の魔術師団長であるイニャス・プランケットには会うつもりがない。
本当はコンヴィル王国からの派遣軍にも挨拶をすべきであると頭では分かっているが、おそらく来ているのが王国騎士団であるならばダンビエ子爵のような魔術師団員を見下すゴマスリのタイプか、ヴァランタン伯爵のような体育会の熱いタイプか。いずれでも会うのが嫌なので逃げてしまう。ルグミーヌ王国にも一緒であったジュリユー準男爵のようなタイプであれば良いのだけど、あまりいなさそうだから、と自分に言い訳をする。
「ジェロ、もう帰るの?」
「はい、モーネ王女殿下のところに今回のご報告に参ります」
「姉上に、ジェロを来させてくれてありがとうと言っておいてね」
「……もちろんです!」「クリノーム、ベルフール、あとはお願いね」
去る前の挨拶のため赴いたヒルデリン王子の幼いながらの話に言葉が詰まるジェロ。
その挨拶の後、ベルカイム王国のアンネ王女ともすれ違うが軽い挨拶のみで終わらせることができた。ヒルデリンと似た年頃で3〜4歳程度であるのでほぼ事情もわからずに、こちらも亡国を経験したり他国へ連れ回されたりしているのだと思うと、色々と思わされてしまう。
「で、俺も≪飛翔≫で一緒に移動するんだよな?」
「クリノームたちと一緒に残るんじゃなければ、な」
「分かったよ」
ネベルソンもずっと≪飛翔≫での移動は経験したことが無いようであり、しつこく騎乗でないのかを確認してくる。
ガニーからここへ急いで来たときに比べれば、緊急性はそれほどではないので気楽なものだと考えるジェロとは認識が違うようである。
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