第639話 ルージャン近くの皇国軍2
「ジェロ!」
ヒルデリン王子が入ってくるなり、ジェロの足元に抱きついて来る。いかにも泣き出しそうなのに我慢している様子である。
「ヒルデリン王子殿下、もう大丈夫ですよ。はい、ジェロですよ」
しゃがみ込んで抱きしめる。ヒルデリンがニースコンで一人ぼっちになっていたときのことを再び思い出すジェロ。
ジェロがヒルデリンの相手をしてなだめている間に、リスチーヌたちがドゥケたちにジェロの今の状況を伝えていた。皇国からラーフェン王国への話、そのラーフェン王家から冒険者依頼としてヒルデリンを助けに来たことなどである。
「今は子爵ではなく、伯爵どころか侯爵だったのですな。失礼しました」
「いえ、ラーフェン王国側からは伯爵ですし、今回は冒険者として来ておりますので……」
「相変わらず変わったことにこだわっておられるのですな」
今回も副官として来ている皇国魔術師団のマテオ・デュクロ伯爵からも声がかかる。
「それにしても、皇国魔術師団としては恥ずかしい限りです。大国ユニオール皇国が、たった一人の魔法使いを相手にするのに他国の魔法使いを当てにするとは……」
「マテオ、あの皇都の軍議参加者に期待をするな……」
ラーフェンに続いてベルカイムへの司令官に任命されたときのことを思い出すドゥケ。
「はぁ……」
「テルガニ子爵!」
しばらくしてアンネ王女と共に入室して来たのは、ベルカイム王国の魔術師団長であるイニャス・プランケットであったが、ジェロは会話したことがないし顔も知らない。
「ガニーの英雄、そしてラーフェン解放の立役者のあなたがお越し頂けるとは!」
まるで知人かのような口ぶりに戸惑うジェロ。
「騎士団長であったラウル・ノヴェールの裏切りのせいで、国王陛下も宰相閣下もお亡くなりに……私はたまたま王城を離れていたときであり、難を逃れていました。アンネ王女殿下が御出陣とのことで駆けつけた次第」
聞いてもいないことを言い訳のように話を続ける。
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