第619話 アナトマ商会出張所

「アナトマさん!またご本人がお越し頂いているのですか?」

「これはテルガニ侯爵。はい、出張所の立ち上げには色々と決めることもありますので」

 冒険者ギルドの出張所のリスチューのことも説明し、これから上手く連携して欲しいとお願いする。


「もちろんでございます。それで、納税先はテルガニ侯爵家になりますが、税率はいかほどを?」

「え!?」

「ジェロ様、領主様なんですから」

「マドロール、すっかり忘れていたよ。確かに冒険者ギルドの職員だったときには買取の一部をガニー領主に納税していた」

「そうですよ。冒険者がいちいち納税なんて出来ませんから、ギルドや商店が納税していますよ」

 前世での消費税のようなものだったと思い出す。冒険者にすると売上の一部をギルド経由で納めるので意味は違うのだが。

「それで税率は……」

「アナトマさん、この辺りのガニー、モージャン、ニースコン、そしてゲンベランの税率を教えてください!」

「……テルガニ様、商人にそのようなことを聞かれるのは、私以外にはしないでくださいよ」

 アナトマも、ラーフェン王国であるゲンベランの街については占領下には高めだったことぐらいしか知らない。ただコンヴィル王国内の税率については当然によく知っており、街の規模が大きいモージャンはガニーとニースコンより高めであると説明してくれる。


「じゃあガニーやニースコンほどの規模もないここでは、それらよりも安い税率に。いっそ無くしても良いのだけど……」

「無くすのはダメです。今後この開拓地の維持にも費用はかかるのですから」


『あ!この前のドラゴンやワイバーンの素材、ここで買って貰えば良かった!』

『確かにもったいないけれど、そんな金額、関係ないほど稼いでいるのに』

『根が小市民で貧乏性なんだよ……』

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