第620話 アナトマ商会出張所2

「これから、テルガニ侯爵家の会計など事務処理を行うのはどなたにされるのでしょうか?」

 今回のことをきっかけにアナトマが質問してくる。

「考えていなかった。今までの仲間の数ぐらいなら自分だけでなくレナルマン、マドロールにも手伝って貰えば良かったから……」

「これからは領主様ですので、王国からも視察、監査があったときに対応が必要になりますし。こちらの開拓地に役所とは言い過ぎですが、事務処理をされる場所と人を雇用されるべきではないかと」


 商店、ギルド、神殿以外として役所的なことなどすっかり失念していたジェロ。

「これから店を出したいという商人も増えるでしょうし、そうなると住みたいと言うものも。うちの商会も土地を売って頂いて店舗と家を構えたいので、それら税金や領地収入を管理される人も必要かと」

「そうですよね……」

「うちの店員をご提供したいのですが、お金関係ではケジメをつけないと癒着を疑われるのはお互いによろしくありませんので。事務処理ができる奴隷を探しましょうか?」

「ありがとうございます。でもそれは……最終手段としていったんはお待ちください」

「もちろんです。では、まずはこちらについて」


 前回に依頼していた兵士たちの家のベッドの布や調味料などを購入しつつ、冒険者ギルドも隣になる一等地をアナトマ商会の敷地にするため販売する。

「これだと出張所というよりかなり大きな建物も作られそうですよね」

「この開拓地、直ぐに大きな街になると思っておりますので、これでも狭くなるかと思っておりますよ。その際には住居は別の場所を売ってくださいね。まずは小さな店舗と、店員の仮住居だけ早々に建てさせて貰いますね」


 同じく大きく確保した冒険者ギルドの敷地、1km四方の開拓地の西の真ん中、将来的にできるはずの街道とつなぐ西門の直ぐ目の前の場所にテント張りしたリスチューと会話していると、アナトマは建物の寸法などを連れて来た商会員と記録しているようであった。

「ジェロ兄、ギルドも負けていられないようだね。頑張るよ」

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