第598話 ジュリユーたちの経緯

 ルグミーヌ王国への外交使節団で一緒になり、魔人と吸血鬼の騒動のときから特に親密になったジュリユー。ジェロがギャストル元王子に使節団をクビにされた後、ムスターデ帝国軍に捕まった使節団員を救う際にも一緒に行ったが、ジェロ達がさらにモーネ王女を救出するために別れて以来であった。

 ヴァランタンたちとは、ジュリユーと一緒に使節団員を救いに行く際に情報提供をして貰った程度の付き合いである。

 ジェロにするとジュリユーの来訪はありがたいが、体育会系のヴァランタンまでの来訪には戸惑うだけである。


「テルガニ様、使節団員の救出以来でご無沙汰しております。あの後も無事にモーネ王女を救出されただけでなく、ベルカイム王国、ユニオール皇国への外交、そしてラーフェン王国からムスターデ帝国の追い出し等々のご活躍、さすがでございます」

「ジュリユーさん、そんなかしこまらなくても。ムラン伯爵達とはベルカイム王国で合流できましたが、ジュリユーさんはあの後は?」

「はい、こちらのヴァランタン伯爵達とニースコン奪還のためにあの辺りで戦っておりました。ただ、テルガニ侯爵が王太子殿下達とニースコン解放に来られた際には、ちょうどモージャンとの物資補給に行っておりましてお会いすることができませんでした」

「それは残念でした」


「俺たちも同様だったのだが、昨日ムランからテルガニ殿が王都にこられたと話を聞いたから、2人を誘ってお邪魔したというわけだ」

「ですから、口調を」

「それはわざわざありがとうございました」

 ジェロは、3人の来訪の経緯は理解したが、まだ疑問が残る。


「ほら、侯爵が戸惑っていますよ」「伯爵は、ニースコン解放や、ラーフェン王国の少なくとも北半分からムスターデ帝国を追い出したこと、自分ができなかったことへの感謝のためにお邪魔しただけなんです。うるさくして申し訳ありません」

「いえいえ、ご無沙汰していた皆様にお会いできてありがたいことです」

 そのまま夕食まで一緒に食べていくことになり、お酒を飲んだヴァランタンがますます上機嫌になったのを無事に見送ったところで、ホッとして大きな息を吐くジェロであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る