第590話 王都での報奨3

 ジェロに与える領地であると、宰相が示した地図に印がついていた場所は、ガニーの街の東の山脈と麓の森から、ガニーの街の南のラーフェン王国との国境への山地と続く場所であった。

「ここならばまだ開拓された村もなく、いくらでも好きに使って貰っていい」


 固まったままのジェロを放置したまま、国王達の横に居た、見覚えのない男性が話し出す。

「我々ラーフェン王国からはこちらの土地を提供させて頂きます。またそれに合わせてラーフェン王国からも伯爵の叙爵をさせて頂きます」

「え!?」

 地図に追加された印は、ラーフェン王国とコンヴィル王国の国境付近で、ゲンベランの街に近い廃村、レジスタンスが拠点にしていた場所を含むエリアであり、先にボーヴリー宰相が示したコンヴィル王国側の土地と連続している。

 両国からの土地を合算すると、カタカナの「イ」の左半分を無くしてかなり太くしたような形状の土地になり、縦棒の途中で国境を越えることになる。


「さらに、戦争奴隷を100人提供します。開拓などご自由にお使いください」

 ラーフェン王国の使者と思われる男性の話の後、宰相が続ける。

「王女の下賜のかわりにならぬが、コンヴィル王国からはさらに侯爵への陞爵(しょうしゃく)を行い、そしてそれに相応しい王都での屋敷を与える」


「モージャン子爵令嬢のユゲット・バンジル、そなたも長き間の外交使節団でよく働いてくれた。相応しい嫁ぎ先を、んんん。それは余計なお世話なようなので、報奨金を与えることにする」

 ユゲットが途中でジェロの方を見たのを確認して、わざとらしく声を詰まらせて報奨金の布袋を差し出す。


 次々と思ってもいなかった報奨を提示されて思考が追いついていないジェロを放置して、国王達が退出した後、コンヴィル王国とラーフェン王国の官僚がイドに対して支度金の支給や、与えられた屋敷の場所の説明などを行なっている。

 領地持ちといっても税収がある場所ではないので、法衣貴族と同じく年金は貰えるらしい。

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