第591話 下城

 待機室で待っていた仲間と合流し、いったんはモージャン子爵の王都屋敷まで戻った一行。

「テルガニ侯爵、落ち着かれましたら新しいお屋敷、ぜひ一緒に行かせてくださいね」

と適度な距離感で声をかけて部屋を出ていくユゲット。


 主従だけになったところで、レナルマンたちが同行していたイドに詰め寄る。

「いったい何があったんだ?」

 王女を下賜される話から始まり、土地を与えられることになったこと、侯爵に陞爵し、それに相応しい屋敷を王都ミューコンで与えられたこと、またラーフェン王国からも伯爵に叙爵されそちらからも土地を与えられ、さらには戦争奴隷を100人与えられることを説明する。


「ジェロマン様、さすがじゃないですか!」

「領民がまだいなくても領地持ち貴族ですか!さすがです!」

「いや、その戦争奴隷や俺たちが初の領民か?ガニーの屋敷はどうしたらいいんだ?」

「それよりもその貰った屋敷に早く移動した方がよくないか?いつまでもこのモージャン子爵の屋敷にいると、ワイバーンの物珍しさでルッツのところに見学者が減らなくて」


「ジェロマン様!?」

「あぁ、だいぶ落ち着いてきたよ。心配をかけてごめんね」

『してやられたんだろうな。ドア・イン・ザ・フェイスか……』

『何それ?』

『最初に大きな要求をして断らせると、次の要求を従わせやすいテクニックだよ。王女の下賜を避けたら土地を与えるのは断れなくして、国境の防衛の一端を担わせるということだろう?ついこの前の魔物の氾濫のところでもあるし』

『流石は国の運営をする百戦錬磨ということかしら』

『しかも両国で事前に示し合わせて、二国から叙爵や繋がる領土だなんて』

『戦争奴隷も裏があるわね、きっと』

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