第540話 ニースコン奪還後
占拠していた帝国軍トップの投降により、再びコンヴィル王国に戻ったニースコン。
まずは、主に老人である街に残っていた住民への慰撫である。
フェリック王太子本人が街をまわり直接に言葉をかけてまわる。
「申し訳なかった。帝国にこの街を奪われることになって。復興には国家をあげて取り組むから、不都合なところは遠慮なく申告してくれ」
流石に王太子へ直接に申し出る者はいないと思われるため、同行している事務方を窓口と伝えるとそれなりに要望が出てくる。
「早く家族達に無事をお伝えくださいませ」
「もちろんだ。モージャン付近の避難者にはすぐに連絡をする」
「帝国軍の軍票はどうなるのでしょうか?」
「心配しなくて良い。コンヴィル王国の貨幣にちゃんと換金できるように取り計らおう」
捕虜となった帝国兵はニースコンに留めておくと食料なども必要になるのと見張りなどに人員が割かれることになる。これから復興に注力するには邪魔であるが、殺すわけにもいかず、帝国との交渉のためラーフェン王国の王都ジークセンに早々に搬送する。
また、帝国兵の武装は、まだ占領地が半分あるラーフェン王国の方が使い道があり得るため、一緒に運搬する。
そうして、モージャン付近の難民への早馬を出しつつ彼らの速やかなニースコンへの帰還の誘導、戦争で傷んだ住居等の再建など王太子軍はやる事がいっぱいである。王太子自身もその陣頭指揮を取るため王都には早馬による速報での報告だけである。
「じゃあ、私たちも土木作業に協力しますか」
ガニーの街でもムスターデ帝国の攻撃を受けた後に、ジェロ主従は復興の手伝いをしていた。あの時と同様に、崩れた家屋等の撤去のために魔法の袋を使ったり、瓦礫を≪粉砕≫したり、建て直しのための土地では≪土壁≫≪石壁≫を活用して整地したり、である。
特に家臣になる前の“ジェロ班”だった仲間達は、ジェロと一緒にこのニースコンの街でしばらく冒険者活動をしていたため、思い入れもある。
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