第538話 ニースコン奪還2
王太子たちがラーフェン王国領内の帝国軍の追い出しに攻め入っていた間のニースコン見張り部隊には、元々ニースコンで勤務していた者たちも居た。彼らを街の中に送り込むことで、ラーフェンでの街々をレジスタンスが解放するのに協力したのと同様にする、というのが王太子軍の軍議での決定事項であった。
「つまり、また私たちが夜間に人を運搬するのですね」
軍議で決まったことを仲間たちに伝えた時のリスチーヌの反応である。冒険者と違って女性がほぼ居ない兵士たちなので、アルマティとリスチーヌによる運搬は苦労すると思われ、ジェロはますます申し訳ない顔で頼む。
「もう決まったことでジェロ様を責めたいわけではないのですが、やはり良いように使われる立場なのですね。外交使節団から追い出した王子の兄なのに」
「リスチーヌ!不敬罪になるぞ!」
「レナルマン、そうは言っても、そうじゃない。自分勝手すぎない!?ニースコンが奪われたのだってあの王子のせいじゃない。なんでジェロ様が危険を!」
「当然そう思うよな」
「王太子殿下!」
ジェロたちに割り当たっていたかまどのところにこっそり来ていたフェリック。
『ヴァル、知っていて黙っていたな!』
『あら、良いじゃないと思って』
「この機会に改めて王家として、テルガニ子爵の主従に謝罪をと思って、な」
「そんな恐れ多い」
「ガニーの街を魔人も含めた帝国軍から救ったこと、そしてその愚弟ギャストルのせいでの被害の賠償も含めて伯爵への陞爵(しょうしゃく)は確定である。ジークセンで合流した後、早馬で王都から了承は貰っている。ただ、ラーフェン王国解放への貢献などを踏まえるとそれでも不足であることは認識しており、このニースコンの解放も終わった後に追加については王都で議論させて貰う。改めて、テルガニ伯爵の主従にはすまなかった」
フェリックがその場で陞爵の通知と謝罪を行う。ジェロはジークセンでそれっぽいことを事前には聞いていたが、まさか皆の前で謝罪のために頭を下げることを王太子自らがするとは思っていなく言葉が出ない。
「では邪魔したな。このニースコン解放での活躍も期待している。よろしくな」
と王太子が去っていくまで、家臣たちも言葉がない。
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