第502話 ラーフェン東方の国境攻防3

葉も枝もついたままの木々を隠れ蓑にして、丘を攻め上がる作戦の開始である。

順次入手できた少量の木々のみで攻め入ると効果が少なく、さらに何らかの対策を検討される可能性があるため、ある程度の数量が集まるまで作戦実施を待っていた。


「見ろ、生木だから敵の火矢や火魔法が効きにくいぞ!目隠しにもなるから、今までの盾では不安な魔術師達も前に進めるだろう?行け、行け!」

アルノワが発破をかけて丘の上の建物に立て籠もる帝国兵に対して全力攻撃を開始する。


最初は、切り倒したままの木々をかついで丘を攻め上がってくることに戸惑っていた帝国兵。確かに敵の姿が確認しにくく矢を射るのも難しいが、そこは割り切れる。また、おそらく最後のときが近づいていると判断した守備隊のネッツァー隊長が消耗品の使い切りを指示する。

「お前達、秘蔵の魔法カードも使いどきだぞ。ネッツァーの意地を、皇国軍、そして帝国の奴らに見せつけてやるぞ。この戦いを歴史に刻むぞ!」


帝国軍におそらく少人数だけは居た魔法使いの数を明らかにこえる攻撃魔法が放たれる。≪火球≫や≪火炎≫のような初級、中級魔法だけでなく、≪雷撃≫などの上級魔法まで飛んでくる。

「やばい、これでは被害が増える一方だ。このまま進むのか?」

攻め手である皇国軍の隊長達が焦っている。


そのタイミングで、一度包囲を解いた後は手薄になっていた、街道の反対側の林から想定していなかった部隊が帝国軍に攻撃を開始する。帝国軍は木々を担いだ騎士団の方に注力していたため、そちらへの対応が十分にできていないようである。

「あれは!?」

「は、服装や装備がバラバラであることから冒険者達かと。当然、攻撃に参加しているため味方と思われます」

「くそ、デュクロ達の策略か。助かりはしたが、礼は言わんぞ」



少し時間はかかったものの被害は少ないまま、皇国軍は国境付近で守備していた帝国軍を撃破することができ、後顧の憂いはないままザーローネの街に進むことになる。

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