第499話 ザーローネ東の国境3

ザーローネの街の東にある、ラーフェン王国とユニオール皇国の国境。

この辺りは単なる平原であり厳密な国境線がどこにあるのか分からない場所である。そのため、互いに少し手前で陣地を構えやすいところに建物を建設して防衛隊を常駐させているのであった。

砦などではなく、もしどちらかが本気で侵略してきたときには耐えられないので、その場合には国境に一番近い街で防衛戦をする前提である。


ラーフェン解放軍の副官であるジョルジュ・アルノワが約2,000人の騎士団の指揮を取りその国境線と思われる辺りを越えていく。

もう1人の副官であるマテオ・デュクロは、攻撃に参加する魔術師団の指揮を部下に任せて、司令官のアクセス・ドゥケと共に本陣で待機になった。同じ伯爵の副官同士で主導権を争うことを避けるためである。


「よし、見る限りは事前情報の通り、帝国軍は元々ラーフェン王国が設置していた丘の上の建物を流用して防衛隊を常駐させているようだな。あれではどれだけ多く見積もっても500人は待機できないだろう。あの建物の手前1kmまで、このまま進むぞ」

「アルノワ閣下、建物の手前には馬防柵や堀があるとの情報もありましたが」

「分かっている。大丈夫だ。まず1km手前まで進み、そこで改めて確認すれば良い」

「敵にこちらの全体を見せる前に別動隊を分けなくても?」

「そのような小細工をしなくても、この兵力差で圧勝することを、あの領地持ち貴族達にも見せつけてやるのだ!」

「承知しました……」



「やはりアルノワは、真っ向勝負か。デュクロ、冒険者達のうち足の速いもの達を建物の裏手の林にまわしておくようにアイメリックに指示するのだ」

「アルノワ殿がすねませんか?」

「何事もなければ好きにさせたままで良い。失敗したとき用の念の為だ」

「承知しました。それもわきまえた行動を取れる人選をアイメリック殿に頼んでおきます」

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