第486話 皇都からの出陣2

皇太子から貰った魔銀(ミルリル)貨以外にも、ジェロの調合したポーションの納品代で稼いだユニオール皇国の貨幣はまだまだ残っている。

冒険者ギルドの同好職員から教えられた店舗以外にも見つけていた魔法カードを扱う複数の店舗への最後の周回に訪れて、皇国で流行のカリグラフィのカードを追加調達するだけでなく、家臣達のために使い捨てにする触媒やスクロールも購入する。


皇都にいた間に追加で入手できた魔導書では、まず上級光属性≪大照明≫と上級闇魔法≪大夜霧≫がある。どちらも、既存の≪照明≫と≪夜霧≫に比べて対象範囲が訓練場1つ分ほどにかなり大きくなるものであるが、残念ながら現代魔術の魔導書であった。


他には≪木人≫というウッドゴーレムを作れる古代魔術の魔導書である。これを古臭い潰れかけの魔道具店のガラクタコーナーでボロボロの表紙なのに手に取ってみた時の感動は忘れられない。古代魔術であり読める人が店員に居ないからの扱いだったようである。

『あら、良いものを見つけたわね』

とヴァルにも言われ、皇都ダンジョンの中で他人に見つからない場所で、魔法陣を刻んだ魔石を核にした木材をウッドゴーレムにする練習をしっかり行なっている。

キーボードで命令を打ち込まなくてもカクカク動くロボットを操作している感じで、ジェロはこっそりと別の意味でも楽しんでいる。

また死霊魔法でスケルトン達を扱うのに比べて、他人の前でも発動することに忌避感は無いため、新たに調達した魔法の収納袋には大量のウッドゴーレムの素材をしまってある。


それらの忘れ物がないことを改めて確認し、パレードでの出発の前日に、屋敷から皇城の合同使節団のエリアに移動するジェロ主従。もちろんワイバーンのルッツも一緒であるため、小さな騒動が城門では発生してしまった。

ヒルデリンは小さなペット扱いの動物も身近に居なかったため、ルッツを気に入ったようであるが、翌日には別れてしまうので、同じく残留になるムラン伯爵達が愛玩用の従魔の調達を約束することになった。



そしてその翌日、ユニオール皇国の将兵と共にモーネ王女の馬車、そしてジェロの貴族用の馬車などが大きな皇都の街中を長々とパレードして出発するのであった。

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