第430話 ワイバーン討伐準備2
リスチーヌの発言ではないが、ニースコンを出た後の、ラーフェン王国内での王都ジークセンを経由しての横断、ベルカイム王国内の王都ルージャンに来るまでの間、ほとんどは目立たないようにこっそりとの移動ばかりであった。それが、今回は立場を隠すこともなく堂々と自分たちだけで移動できるので気楽である。
途中の街では薬草等を仕入れつつ、ランソンヌ側の魔物の情報の聞き込みも行うが、特に問題の話は聞こえてこない。しかし、国境手前のランソンヌにまで到着すると、冒険者ギルドでは情報を認識していた。どうも山脈を超えたユニオール皇国側に被害が出ているようである。
そしてその冒険者ギルドには、宰相ドゥネーヴが指示していた通りの濃紺ローブをまとった男が胡桃2個を片手であそびながら待っていた。
「話は聞いているが、刀を二本刺したお前がジェロで良いのか?」
「あぁ」
「じゃあ明朝、東の門の外で待ち合わせだ。しっかり準備してくるんだぞ」
「あいつ、なんで王都の話を分かっているのでしょうね。私たちのバトルホースより早い移動手段なんてほとんどないのに」
「まぁ流石は宰相、というところなのかな。昼夜をついで伝達したのかもしれないし」
国境の街とはいうものの、山脈の入口であり、しかも敵対することができない関係である皇国への手前だからか、それほど物々しい雰囲気ではない。適当な買い物はした後は、宿屋でしっかり疲れをとるように仲間達に指示をしつつ、自身は護衛という名目での見張りのリスチーヌとマドロールに付き添われて、冒険者ギルドの魔法カードの在庫を見ている。
特に新たな物が見つかりはしなかったが、そのやり取りの中で職員に聞き込みを行うと、流石は国境の街だからか、皇国内の後継者騒動について教えて貰える。
セラフィム・カリム・ユニオール皇帝が病にふせている中、文官系のジャムス皇太子に対して武官系のマルキ第3皇子が対抗しており、国内が派閥闘争をしているようである。
この皇国が強靭なまま帝国と対抗していれば、帝国がラーフェン王国に攻め入ることも無かった可能性を聞いているジェロにすれば、モヤモヤ感が膨らむ一方である。
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