第414話 ベルカイム王国への国境3

それからも何度かロック鳥の群れに出くわすことがあったが、イド達に任せて大丈夫であったのでジェロは念の為にモーネ王女の近くに居るだけで何もする必要がなく、逆に手持ち無沙汰になって困るぐらいであった。


そしていよいよ国境越えで通る一番標高が高い場所と思われる場所、山と山の間のくぼみである鞍部(あんぶ)、コルにたどり着いた。そこからは平坦(へいたん)に近い片峠(かたとうげ)になる。振り返ると斜面であるが、前向きには平坦である。左右の山々は高い先が見えない。

「ここを越えると、ベルカイム王国領なのでしょう。もう少し頑張りましょう」


「おい、アイツらは!まさか龍!?」

「イド、焦らないで。翼も無いですし亜龍です。地龍ドレイクです。とは言ってもBランク魔物ですから皆、気をつけて」

レナルマンが説明してくれるが、ジェロも書物でしか確認をしたことがない魔物である。硬い鱗に覆われた大きなトカゲのようであり、口からは範囲攻撃になる炎を吐くという。


「炎ブレスが怖いから、まず壁を作って安全なところから攻撃をしよう」

4頭のドレイクに対して、リスチーヌとマドロールが作った≪氷壁≫ではあまり長持ちせず、アルマティの古代魔術での≪氷壁≫が何とか持ち堪える感じであった。しかしそれでも一番怖いブレスへの対処ができているため、体当たりや尻尾の振り回し攻撃へも気をつければ、他のメンバによる手数も確保できて氷属性付与の魔剣や弱いながらに自身の攻撃魔法などで少しずつドレイクの体力を削っていけている。

『これだとジェロの≪氷壁・改≫の支援も要らなそうだね』

『頑張っているね、皆』

ジェロは、ロック鳥だけでなくドレイクに対しても、自身で手出しする必要がない寂しさもありつつ、家臣達の成長をありがたく見守る。


以降もドレイクをはじめとする魔物と遭遇しても家臣達に任せるという上司、貴族家当主としての立場を図らずしも学んでいくことになった。

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