第412話 ベルカイム王国への国境

ラーフェン王国からベルカイム王国への国境付近にはムスターデ帝国の兵士たちが集結し、ベルカイム王国側を威圧していた。

「うわー、コンヴィル王国への国境よりたくさんだね」

「ベルカイム王国は態度が曖昧だから帝国が威圧しているんだろうね」

「やっぱりこの街道は通れないね。見つかっても面倒だし、もっと山奥側に行こう」


王都ジークセンからこの国境まで何とかジェロ達は逃げてきた。やはり問題になり得たのはモーネ王女であり、見つかる可能性を踏まえて、モーネには変装をして貰っていた。

「せっかく綺麗なのに不細工にする化粧なんて初めてだわ」

「そうよね、普通は逆だから。でも口紅で大きな口に見せたり、眉毛も太く大きく見せたり、目の周りの塗り込みで左右がチグハグに見せたり」

「トドメは血を塗って乾燥させて瘡蓋(かさぶた)のようにしたのも」

女性陣による非美人化の化粧は、彼女達のツボにハマったようで、エルフで美形なアルマティも必要なときには自分でも実施しようと密かに考えていた。


この国境に来る前に、帝国兵が占領したラーフェン国民を二等国民と蔑(さげす)む光景を何度も目の当たりにし、帝国兵による女性への乱暴の噂も聞き、早く帝国兵を追い出すようモーネは決意するのであった。

また、帝国兵は軍票を使うのだが、陰ではラーフェン国民同士は自国貨幣を欲しがり、相変わらずポーション販売の際には軍票で支払われることが多く、貨幣ならば割り引かれてしまうことになった。高級宿屋は軍票を受け付けることは分かっていたが、食料や薬草や薬瓶の仕入れでは軍票ではなく貨幣を望まれ、店舗によってはポーションと物物交換とした。家臣達が希望するのもあり、販売しているのを見つけたときには魔剣なども予備を含めて購入するので、余計に支出が増えることになったことから、手間を抑えるためにポーションとの交換もした。


仲間達が交代で馬車に乗り込みジェロに魔法の教えを乞うたり、休憩時に互いに訓練したりしているのを見ると、何か思うところがあったのかと考え、希望に合わせて今までと違う武器でも購入することにしたのである。

ラーフェン国内では治安も悪化して来ているようで、人気のないところでは盗賊達の襲撃もあったが、それすらも実践訓練に活かしているようでジェロはあまり手を出さずに家臣達に任せるようにしていた。

『魂だけは貰っておいたけれどね』

『しっかりしているよな、ヴァルは』

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