第390話 レジスタンス拠点2

ムラン伯爵が外交官らしくドナシアンに対して話を簡潔にまとめて進めている。

『ムラン伯爵に任せていると会話しなくて良いかな。まだ鼓動が早いよ』

『大丈夫よ、心配しなくても。いざとなったら私がアイツを殺してあげるから』

『だからそこまでは良いって』


ドナシアンは使節団達が捕まった経緯の詳細までは知らなかったようだが、今回の話で納得できたという。

「逆にあなた達はご存知でないと思われる驚愕の事実があります。現在、ニースコンは帝国の占領下にあります」

「え!?そんな」

「いえ、本当のことです。ですから国境の位置が変更され、ニースコン側から来た帝国兵と戦闘になったのです。伺った感じですと、まぁ橋での戦闘での煙か何かに気がついた帝国兵が迎撃にやって来たのでしょうな。護衛が少なかったのもニースコンに兵を移した後だからかと」

「では、使節団員の皆さんをコンヴィル王国にお連れするとなると……」

「ニースコンは除外ですので、例えばガニーまで山越えするか、この拠点に滞在頂くか。後者の場合にはもちろん色々と働いて貰いますがね」


ドナシアンといったん別れて、休憩場所として与えられた建物で相談を行う。

「我々は一刻も早くコンヴィル王国に戻り体制を立て直す必要がある」

「ムラン伯爵のお話もごもっともですが、私たちはモーネ王女の救出に今すぐにでも向かいたいのです」

「テルガニ子爵の話もわかる。ニースコンが落ちたとなればなおさらベルカイム王国との共同戦線が重要であり、そのためにはモーネ王女も同行いただきたい」

「テルガニ様、勝手ばかりで申し訳ありませんが、冒険者クランを抜けさせてください。そして残った王国騎士団員と一緒にムラン伯爵とカルカイム子爵をお守りして山越えします」

「クランの件は大丈夫ですが、官僚と使用人の皆様はここに残されるので大丈夫でしょうか?」

「ここでの仕事内容によりますが、山越えは私たちには厳しいのではないかと」

「え?そんなに山越えは辛いのか?」

「ムラン伯爵、頑張りましょう」

「カルカイム子爵、そなたはまだ私より若いではないか……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る