第379話 ステフェンの街2

結局、モーネからは救出することに同意を得られないまま宿屋に戻ることになったジェロ。

「レナルマン、どうすれば良いかな」

「モーネ王女を助けるはずの依頼が、使節団を先に助けるというモーネ王女から追加依頼ですか。その追加依頼を達成しないと元のヒルデリン王子からの依頼に着手できない」

「そうなってしまったな」

「そうですね、モーネ王女を先に助けると仕返しに使節団員が危ないというならば、逆にしますか。モーネ王女の価値の方がムスターデ帝国側にはありますので、使節団員を奪還しても王女の命は狙わないでしょう。それにこれだけ離れた場所で救出行動をとれば、こちらの機動力の方が上だと思いますので、ますます安全かと」

「なるほど。そうなると、あの人数をどうやって逃すか、だな。王女一人ならば気楽だったんだが」

「ジェロマン様は嫌だと思いますが、いったんドナシアンさんのレジスタンスの拠点に預けてしまうのはいかがでしょうか?あそこならば近いですし、順次ニースコンに逃していくこともできるのではないかと」

「ドナシアンさんか……」

「申し訳ありません!他の案を考えます!」

「いや、その案が一番良いと思うよ。そうしよう」

「そうなるとこちらの班分けをまた考えないとね。一人だけで≪飛翔≫であっちに戻るのが一番速いんだけど」

「はい、それはダメです!」

「そう言うよね。じゃあ女の子だけだと不安だから、レナルマンとマドロールがモーネ王女の追跡を、私はアルマティと一緒に引き返すよ。王女は王都に向かうしか無いだろうからまた追いかけてくるよ」


翌日、「また救出に来ます。仲間が尾行します」という言葉だけモーネ王女に届けた後は、アルマティと共にゲンベランに向けて、また騎乗で疾走することになった。アルマティもかなり騎乗に慣れたようであり、余計な気を使う必要は無くなっている。

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