第378話 ステフェンの街
ゲンベランの街に外交官のムラン伯爵達が居ることを確認したジェロは、モーネ王女の足跡を追って王都ジークセンの方向に街道に沿って移動して来た。そしてこのステフェンの街の帝国兵の拠点に見覚えのある王女の馬車を発見する。
『居たわよ、モーネが』
『ヴァル、ありがとう。ちょっと試したいことがあるんだ』
風魔法≪集音≫の応用で、帝国兵拠点の塀の外から中にいるモーネとヒソヒソ話をしたいのである。いきなり本番は心配なため、似たような距離でアルマティに立って貰い練習する。お互いに≪集音≫は習得済みなのでそれを活かせばやりたいことはできたが、モーネは魔法使いではないためこちらから音を届ける必要がある。≪集音≫の時にも意識したように音は空気の振動で伝播する前世知識を活用して、逆方向に≪そよ風≫のように音を送れば良いのである。
昼のうちに練習したジェロは夜に散歩のフリをして宿屋を出て、モーネの居る帝国兵の拠点に近づく。
「モーネ王女殿下、ジェロマン・テルガニです」
「え!?」
「お静かに。キョロキョロしないでコッソリお話しください」
「え、どういうことですか?」
「ヒルデリン王子殿下からモーネ王女殿下を救出する依頼を受けまして、このステフェンの街に来ております」
「そんな。護衛任務も解除されたというのに」
「それは良いのです。それよりも、この街にモーネ王女殿下以外の使節団員はいますか?」
「いえ、私一人です」
「では早々にお助けに参ります」
「いいえ、おやめください。私が逃げてしまうと他の使節団員の命に危険が及びますので」
「そんな……ヒルデリン王子殿下が悲しみます」
「いえ、私も覚悟しております。あの子にも覚悟して貰います」
「ダメです。ヒルデリン王子殿下が泣いてしまいます。ムラン伯爵達には私の家臣達が付いております。ジュリユーさんも一緒に見守っています。王女を先に助け出し、必ずあちらも救出します」
「それは危険な賭けですのでダメです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます