第310話 司教バスチアン3

「あの司教、侯爵の子息らしい性格であったな。ところどころ傲慢なところが見えただけでなく、ジェロが魔法好きと言う弱点を握ったと思って喜んでいたぞ」

「そんなこと、弱点ですかね」

「何か言うことを聞かせたいときに使えるネタになり得ると考えるのが貴族だ。ディミトリ司祭は聖職者らしい良い人のようだったが。冒険者ギルドだけでなく、王国魔術師団、デメテル神殿と順調に唾つけされ囲い込みされているな」

「どちらも、こちらにもメリットがある程度で終われば良いのですが」

「まぁギルド職員である限り、助けられるところは助けてやるよ」

「ありがとうございます。どうか引き続きお願いします」

ザールと挨拶をして別れる。



ベルカイム王国への使節団の準備が整うまで、ジェロと仲間達は王都ならではの買物をしたり、アルマティを先輩が連れて近場での魔物狩りをして木級から鉄級冒険者への昇格を果たしたり、マドロールへ魔法指導を行ったりしていた。マドロールも今まで魔法に縁は無かったようであるが、地頭の良さのおかげか現代魔術語は早めに理解でき、触媒と魔法陣は無で詠唱しながら≪種火≫や≪水生成≫が可能となり、魔法発動体の指輪を授けることになった。


使節団として、前回のルグミーヌ王国へ向かった時に比べて王国魔術師団が総入れ替えというのは挨拶をして知っていたが、王国騎士団としてもジュリユー準男爵以下は継続しつつ、ギャストル王子が追加されたことでルコント・ダンビエという子爵が新たに護衛隊長に任命されたと伝え聞いている。

外交官のムラン伯爵とカルカイム子爵は継続であり、モーネ王女達も当然同じであるので、事前の顔合わせはギャストル王子の意向で省略されることになった。

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