第309話 司教バスチアン2
金貨を献金されたことを認識したバスチアンは、先ほどまで以上に笑顔になる。
「さすがは勢いのあるテルガニ子爵。ありがとうございます。その行いに対して女神様も報われるでしょう。名誉助祭に任命させて頂きます」
「え!?いえ、そんな」
「いえいえ、どうかお受けください。また魔法が得意であるとか。聖職者である助祭以上であればこの神殿の図書室へも立ち入りが可能となりますよ」
「え!」
「ははは、正直ですな。この後、ディミトリにご案内させますよ」
司教バスチアンの元を離れ、司祭ディミトリに従って図書室に移動していくジェロ達。
「テルガニ子爵、誠に申し訳ありませんでした」
「いえ、こちらこそご無礼を色々と。それに名誉助祭なんて」
「あ、それは多額の献金を頂いた方には皆様へ。お気になさらずに」
「そうだったんですね。ところで、司教様は家名をお持ちのようでしたが……」
「はい、このコンヴィル王国のデメテル神殿での司教は貴族のご家族がお勤めになる慣習がございまして。バスチアン司教はフイヤード侯爵家の出になります」
「なるほど。ところで名誉助祭でも図書室に立ち入りができるのですか?」
「はい、神殿にご縁があったテルガニ子爵はご存じと思いますが、助祭、司祭、司教、大司教というように聖職者の役職はありますが、それより下の単なる従業員と区別されているだけです。名誉助祭も助祭と同格の扱いになります」
「そうですか、良かったです」
「魔法が本当にお好きなのですね。どうぞこちらになります」
ジェロが覚悟していたように、神殿の魔導書は神の教え部分が前半に多く記載されている物ばかりであった。しかし、未習得の王級回復魔法≪王回復≫を見つけた時には顔が緩む。上級回復魔法≪上回復≫は指欠損程度までであったが、これは臓器欠損までも回復できる魔法のようである。その他にも、≪上回復≫の古代魔術が記載されたものも見つけられた。ディミトリに断った上で研究ノートに必要部分だけ転記させて貰う。
「王都のデメテル神殿でも上級回復魔法が使える者はごく一部です。まして王級はおりません。ぜひ世のためにお役立てくださいませ」
「はい、頑張ります。ありがとうございます」
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