第308話 司教バスチアン
孤児院の子供達に囲まれてもっと見せてとせがまれ、なんだかんだと楽しそうなジェロ。
「ジェロ様まで子供に戻られたみたい」
「誰かを傷つけないで魔法の良さを素直に思って貰えるからなのだろうな」
リスチーヌとレナルマンが話していた横で、ディミトリの所へ使用人が駆け寄って来て何かを話している。
「テルガニ子爵、申し訳ありません。私の上役にお会い頂けないでしょうか」
「ディミトリ司祭!」
「ザール騎士爵、申し訳ありません。私もそのつもりでなかったのですが、この魔法で気づかれたようで。ザール騎士爵も、もちろんご同行頂けないでしょうか」
『何かディミトリの感じだと面倒な感じかもね』
『言うなよ』
ジェロはせっかく良い気持ちになっていたのに重たい気分になる。
「これはこれは。噂のテルガニ子爵、ようこそこちらの神殿にお越しくださった。司教のバスチアン・フイヤードです」
「はい、お邪魔させて頂いております」
「家名の由来が、我らが豊穣の女神デメテル様、そのガニーの街の孤児院のご出身からテルガニとされたと伺っております。ガニーも私の所管であり、誇らしい限りです」
「いえ、ご相談もなく家名を決めて申し訳ありませんでした」
「とんでも無いことです。是非、今後ともデメテル様の布教にご尽力ください。本日もご支援頂けましたら幸いです」
「?」
「ジェロマン様、献金の要求ですよ」
こっそりレナルマンがささやいて教えてくれる。
「失礼しました。遅くなり申し訳ありません。こちらをどうぞお納めください」
何枚かの金貨を小袋に入れて差し出す。
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