第297話 マドロール2

夕食の時間帯になり仕方なく部屋から出て来たジェロは、マドロールを迎えて仲良くしている家臣たちを見てホッとする。

「テルガニ子爵、どうぞお座りください」

マドロールが宿の店員にかわり配膳などを行おうとする。

「いや、良いんだよ。マドロール、アルマティ、そして皆に改めて言っておくね。奴隷と言っても特に何か意識しないようにね。皆、同じテルガニ家の同僚と思って。他人から見たら奴隷かどうか分からない単なる家臣と見えるようにね。だからできる限り一緒に食事もしよう。それから、私のことは皆と同じように単なるジェロ様かジェロマン様と」

「俺達にも“様”ではなく呼び捨てか“さん”にね」

「いえ、それは流石に」

「良いんだよ、マドロール。それがテルガニ家と思って。それ以外は、仲間のためにならないことをしない、仲間のことを思って行動する、それだけをやって欲しい。それが命令だと思ってくれたら良いから。もちろん貴族社会のことも色々と教えて欲しいけれど」

「ご命令とあらば、かしこまりました」

「うーん、まぁ良いか」


「ジェロ様、それでは貴族としての体面が困るんじゃないですか?」

「そうかなぁ。じゃあ、他所の人が居るときだけ体裁は気にして貰って、そうでないときは今まで通りで」

「日頃から慣れなくていいんですか?ボロが出ますよ」

「まぁ追々で良いかなと。必要な時にはマドロールが皆にも教えてね」

「かしこまりました」

「まだ固いわね。マドロール、ジェロ様の夜のことは任せないからね」

「はい、かしこまりました。いえ、わかりました」

「まぁ少しずつね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る